主人公<横山栞>は28歳、東京・谷中でアンティークの着物店を営み、4年が過ぎました。
過去にフォートジャーナリストを目指した高校の同級生の<岡田雪道>と付き合っていましたが、ひょんなことから別れ、今は彼も結婚して女の子の父親です。
ある日父親と良く似た声をした男性客<木ノ下春一郎>が表われ、お茶会用にと着物を求めに訪れます。
どことなく「キリン」を彷彿させる<春一郎>に、<雪道>との過去を心の隅に起きながら思いを寄せていく<栞>ですが、彼は10歳の女の子がいる妻子持ちでした。
下町風情たっぷりの谷中を舞台に、お菓子持参で遊びに来る<まどか>や寺の住職の嫁<イメルダ夫人>、80歳に近い<イッセイ>さんなどの脇役に囲まれながら、一年を通して成長していく<栞>の姿が、季節の移ろいと共にグルメの描写を交えて丁寧に描き出されている一冊でした。
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