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本書には、7篇のサスペンス(ミステリー)が納められていますが、どれも巧妙な語り口の中で、最後に「うっ」とさせられる機微にとんだ内容でした。
著者の長篇の場合、どんでん返しがこれでもかと出てきますが、短篇だとそうもいかずに、読み手として「アア~」というところで納まりますので、安心して読めます。
副題に「コミュニケーション感覚」・「現実感覚」・「肉体感覚」等、七つの「・・・感覚」が付いていますが、どの短篇も著者の感性がコンパクトな形にまとめられ、粒ぞろいの短篇集の一冊だと思います。
昨日25日、長野県のクリニックで代理出産により我が子を得た女性が記者会見を開いていました。
医学の進歩がどこまで行くのか、あるいはどこまで求めるのか、重い話題を含んでいます。
この会見を見ながら、帚木蓬生氏の『エンブリオ』(2002/7)という小説を思い出しました。
「エンブリオ」というのは、受精後8週までの胚の事です。
主人公は産婦人科医ですが、学会にも所属しておりませんので、医学的な規制を受けることなく、豪華ホテルと見間違いえる病院で、不妊治療に実績をあげている医師です。
彼は、最終的には男性のお腹の中で胎児を育てる実験に手を染めてゆくのです。
新しい命を歓迎すべきなのか、神への冒涜なのか、今後の議論に注目です。
本日、私の好きな和食堂【まるさ】にて、このブログの「立ち呑み日々雑感」でお馴染みのMSHIBATAさんに対して、神戸新聞の取材がありました。
今月末には書店に並ぶと思いますが、今回出版の『神戸ぶらり下町グルメ決定版』に関しての取材です。
MSHIBATAさん、昨年度は『神戸立ち呑み八十八カ所巡礼』を出版されていて、私も紹介文をこのブログにコメントしました。
ミシュランも京都・大阪の高級料理店は網羅されているみたいですが、庶民の琴線に触れるいいお店には縁遠い存在だと思います。
人情味あふれるそれぞれのお店、今回の掲載は厳選された199店だそうですが、ぜひ足を運んで皆さんに確かめていただきたいものですね。
レトロウイルスに感染した<HIV-4感染第二世代>の「ミュウ」を狩る「ミュウ・ハンター」の元傭兵の<シド・アキヤマ>を主人公として、物語は進みます。
時代設定は近未来でしょうか、人間ではなく悪魔の移り変わりの生物だとされた「ミュウ」を隔離しようとする内閣情報調査室は厚生省を中心に自衛隊メンバーで構成する「特別免疫部隊」を作り、「ミュウ・ハンター」と激突、どちらも「ミュウ」の真意がわからないまま敵意を持って戦う羽目に陥ります。
「ミュウ」は悪魔なのか、特殊な能力を持った新しい人類の姿なのかを舞台として、遺伝学者の<飛田靖子>や、興味を持って取材活動するフリージャーナリスト<デニス・ハワード>達を巻き込み、結末がどうなるのかの興味を持たせながらの構成は、アクションものとして楽しめました。
エッセイ集かと思えるほどの掌篇小説として、218ページで26篇が納められています。
タイトルの『ハヅキさんのこと』は、女性教師二人の物語です。
教師の性格を反映してか<ハヅキ>さんの学級は「明るい真面目なクラス」であり、<わたし>の学級は「そこはかとなくだらしない」と、対照的な性格の二人ですが、管理教育に反発し合うところでは一致、なぜか酒呑み友達として意気投合しています。
著者自身4年間私立の中・高校で生物の教員を経験していますので、自伝的要素もあるのか、面白くそして切ない短篇として心に残りました。
どこにでもある日常生活の中の男と女の心のふれ合いやすれ違いが、「そうだよな」とじんわりと心に広がる一冊でした。
「馬琴」とは江戸の人気戯作者<曲亭馬琴>(明和4年6月9日~嘉永元年11月6日)のことであり、本名<瀧澤興那>です。
本書は、一人息子<宗伯>に嫁いできた<土岐村てつ>の女性一代記が語られています。
結婚早々に<テツ>は<馬琴>により<路(みち)>と改名させられ、医者でありながら病弱な夫<宗伯>の看病と、義母の<百>の癇性持ちの性格、<馬琴>の何事にも関しても細かい性格に振り回されながらも、持ち前の明るい性格と芯の強さで瀧澤家を切り盛りしていきます。
<馬琴>は晩年目が見えなくなり、<みち>は字を覚えながら『南総里見八犬伝』の第177話からの代筆を行い、<馬琴>は28年間にわたる連載を完成させたあと、82歳で亡くなっています。
文政10年の春、21歳で嫁いできた<みち>は、安政5年8月14日、当時江戸で流行していた「コロリ」で51歳の生涯を閉じています。
バブル景気の1988年、ふるさと創生の名目で各自治体に1億円が支給されましたが、桜宮市は直径70センチの黄金の地球儀を作り、アクアリウム別館の深海館に設置していました。
主人公の<平沼平介>は、大学院で物理学専攻を途中で諦め、父親が経営する町工場で営業マンとして平凡な日々を過ごしていましたが、8年ぶりに桜宮市に戻ってきた「ガラスのジョー」こと<久光穣治>が、この「黄金の地球儀」を強奪しようとの計画を持ちかけてきます。
そんな折、桜宮市役所管財課の<小西輝一郎>が知らない間に父親と結んだ契約書を持ち込み、「黄金の地球儀」の警備業務を追行するようにと現れ、警備がないと知った<平介>は、工場の設備を使って偽の地球儀と一時的に取り換える作戦をおもいつき、<ジョー>と怪力の持ち主<アイ>と深海館に忍び込むのですが、すでに金塊は取り出されていました。
二転三転と急展開する強奪事件が、個性ある脇役陣に囲まれて、見事な着地点を目指して物語は進み、最後までハラハラさせられるコンゲームとして楽しめました。
<鎧月之介殺法帖>シリーズとして、本書が 『女刺客』 に次ぐ第6作目です。
石和(いわさ)代官所の代官<川治軍兵衛>の悪行を奉行所に訴えようとした<小平次>が、江戸にて何者かに切られますが、死に際に村の助けを岡っ引きの<お鶴>に言い残して亡くなります。
<鎧>は<お鶴>から事件のあらましを聞き、すぐにでも甲州に出向こうとするのですが、太鼓持ちの<猫千代>が賭場で揉め事を起こし、それは<お銀>という悪婆の原因だとわかりますが、彼女は押し込んだ生薬屋で老女を刺殺して江戸から逃げていました。
<鎧>・<お鶴>・<猫千代>が出向いた甲州は無残に焼き尽くされ、<鎧>は無頼者を囲っている悪代官<川治>と対峙していきますが、またそこで江戸から逃れて来ていた<お銀>と遭遇することになります。
奇妙な女主人<由良>の住む屋敷での出来事や、百姓上がりで代官所勤めの正義感の強い<小助>や<彦六>の活躍もあり、娯楽小説としてのツボを押さえているのは、テレビドラマの脚本を多く手掛けている著者ならではの構成でした。
前作 『八朔の雪』 に次ぐ<みをつくしの料理帖>としての第二巻目です。
付け火で主人<種市>の蕎麦屋「つる家」を焼失してしまいましたが、<澪>は屋台見世で正月を乗り切り、二月の初午の日に九段坂に新しい店を構えました。
2階建となり武家屋敷も近く、2階座敷は武家専用としての使い分けを行いながら<芳>や<おりょう>に手伝ってもらいますが手が回らず、<ふき>という13歳の少女を下足番として雇い入れます。
新規の客として戯作者の<清右兵衛門>が常連客となり、心を寄せている<小松原>にどこか似ていて、<澪>は会話を楽しんでいます。
両親を亡くしている<ふき>や、<おりょう>の息子<太一>が風疹に罹りと、親と子の愛情問題を絡ませながら、<澪>の行方不明だった幼馴染の<野江>が吉原遊郭の翁屋の<あさひ太夫>と確認できたりと、市井の人情噺を下地に季節感あふれる料理に打ち込んでいく<澪>の姿が生き生きと描かれていました。
本書『真鶴』は、2006年に文藝春秋社から単行本として刊行され、2007年(第58回)の「芸術選奨文部科学大臣賞」を受賞した作品です。
12年前に夫<礼>が失踪した44歳の<京>は、中学3年生の娘<百(もも)>と、古希を迎えつつある母と暮らしています。
文筆業の<京>は、夫<礼>の影を背負いながらも、出版業界の7歳年上の<青茲>と不倫の関係を持ちながら、日常から逃れるように夫の日記に書かれていた神奈川県の西部に位置する「真鶴」に出向いていきます。
物語の視点は<京>の目線で描かれ、身の回りに<あの女>がつきまとう幻想に取り憑かれていますが、「真鶴」での出来事を通して心の再生を掴む一年が描かれています。
文中に出てくる、「好きであることが、共にいるゆえにはならない」という一文が、心に残る一冊でした。
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