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神戸:ファルコンの散歩メモ

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『天使の屍』貫井徳郎(集英社文庫)

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『天使の屍』貫井徳郎(集英社文...
イラストレターの<青木>は、突然中学2年生の息子<優馬>が、マンションの屋上から飛び降り自殺をし、遺体から幻覚剤であるLSDが発見されたと知り、なぜ14歳で死ななければいけなかったのかと原因を探り始めていきます。

<優馬>と仲の良かった生徒を担任から教えてもらい、級友たちを訪ねて回る途中で、話を訊いた<永井>もまた中学校の屋上から飛び降り、遺体からLSDが検出されます。

ますます<優馬>の自殺の真相を知りたいと考える<青木>ですが、<子供の社会には、大人の論理は通用しない>ということを身を持って感じる最中、<青木>は息子<優馬>が登場するアダルトビデオの恐喝の電話を受け、自ら出向いていくのですが・・・。

子供たちはなぜ死んでいくのかと読者に疑問を持たせながら、父親としての<青木>の行動を通して、共に謎解きに参加すること構成で面白く読み終えれました。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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『スクープ』今野敏(集英社文庫)

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『スクープ』今野敏(集英社文庫...
主人公<布施京一>は、TBNテレビ報道局の看板番組である『ニュース・イレブン』所属の遊軍記者です。

定例会議には遅刻や欠席をするという、素行には問題がありますが、独自の取材ルートで班員逮捕の現場をスクープしていきます。
強引な捜査で時には身の危険を感じさせる場面もありますが、お互いの立場を認め合う警視庁捜査一課<黒田裕介>との共同戦略で、危機を乗り越えています。

本書には<布施>のスクープ七話が収められており、「住専問題」や「ドラッグ」・「援助交際」と言った社会性を含んだストーリーが楽しめます。

<黒田>刑事との駆け引きや、東都新聞社会部記者<持田豊>などの脇役も人間性があり、市井的には縁がない事件を身近な現実として感じさせる著者の手腕が光っていました。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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『蝕罪』堂場瞬一(中公文庫)

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『蝕罪』堂場瞬一(中公文庫)
行方不明者を探す専門部署として、警視庁に設立された失踪課ですが、その一つが、出世欲の高い48歳の<阿比留真弓>警視を三方面分室室長とする渋谷中央署です。

失踪課の実態は厄介者が寄せ集められた部署の感があり、心臓病を患っている56歳の<法月大智>警部補、定時退庁で合コンに精を出す33歳の<六条舞>巡査、拳銃のエキスパートですが<舞>の鞄持ち的な気弱な29歳の<森田純一>巡査、元プロ野球選手で4人の子持ち35歳の<醍醐塁>、そして主人公<高城賢吾>と同様に金町所から27歳の<明神愛実>巡査部長が同時に配属されていますが、彼女は捜査一課に配属される予定が警察の不祥事に関連して玉突き人事のあおりを受けています。

この課をまとめるチーフとして、45歳の<高城>警部補が<阿比留>の声掛かりで多摩東署から配属されましたが、彼には7年前に小学生の娘<綾菜>が行方不明になり、それが原因で弁護士の妻とは離婚、それ以来酒浸りの生活が続いていました。

そんな配属初日、結婚を一か月後に控えた婚約者が失踪した事件が持ち込まれ、<高城>は「給料分だけの仕事」をするために<明神>と捜査を始めていきます。

殺人事件の捜査とは違い、職場や友人関係を渡り歩く地味な捜査が続きますが、個性ある失踪課の人物たちの活動が期待できるシリーズになりそうです。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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『星の見える家』新津きよみ(光文社文庫)

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『星の見える家』新津きよみ(光...
本書は、タイトルになっている表題作を含む7篇の短篇が納められています。

著者の短篇は読みだすと最後まで一気に読みたくなる筆の運びで、また最後の展開がどうなるのかが予測できずに、「えっ!」という驚きで終わる小気味よさが楽しめます。

本書の短篇の主人公は女性たちで、さりげない日常生活に潜んだ落とし穴にはまりこみながら、自らでしか解決できない問題に対処していく姿が見事に描写されています。

表題作の『星の見える家』は、したたかな女にぞくりとし、『五年日記』では女同志の連帯感に驚き、『再来』では女性ならではの感性に目を見張りました。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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『ペルソナ探偵』黒田研二(講談社文庫)

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『ペルソナ探偵』黒田研二(講談...
読み終るなり、著者の仕組まれた技巧的な全体構成に、ただただ驚くばかりでした。

プロローグとエピローグの間に4篇の物語が納められていますが、どの作品も作家を目指し同人誌に参画している6人の男女が語り手であり、小説の作者として登場しています。
彼らはパソコンのチャットルーム「星の海」に集まり、それぞれ星座のハンドルネームを責任者である<カストロ>から名付けられ、お互いに実名も住所も知らない仲間たちです。

そんなメンバーの一人<ベガ>が、仲間のメンバーらしき人物から脅迫電話を受け、自殺に追い込まれてしまいます。

最終章にて冒頭のプロローグの意味合いが俄然意味を成してきて、読者は前半の三話に書かれていた伏線の巧妙な配置と結末が楽しめる一冊でした。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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『最後に咲く花』片山恭一(小学館文庫)

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『最後に咲く花』片山恭一(小学...
ファンドマネージャーとして投資会社に勤めている<永江>は5年前に離婚した39歳、偶然大学時代の同級生<由希>と再会しますが、彼女は心肺同時移植をしなければ助からない病気を患い、<永江>に安楽死を求めます。

かたや<永江>は、テレビ局に勤める20代の恋人<沙織>と結婚を前提に付き合っていましたが、行動的な<沙織>に違和感を感じ始め、女性として見ていなかった<由希>に対していつしか心の安らぎを感じ始めます。

そんな折、大学時代の山岳部の仲間で建設会社の副社長である<波佐間>が、単身登山に出掛けたまま戻らないと彼の妻から連絡を受け、彼を探すべく山に捜索に出かけていきます。

人間社会の拝金主義や、体外受精での胚の選択など、現代的な世相を反映させながら、人間本来の生き方は何なのかという根源的な問題に対して、真正面から取り組んだ作品として評価できる一冊です。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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『凸凹デイズ』山本幸久(文春文庫)

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『凸凹デイズ』山本幸久(文春文...
主人公の<凪海(なみ)>は22歳、<大滝>と<黒川>が主催するデザイン事務所「凹(ぼこ)組」で働いています。
デザインという仕事を楽しみ、前向きで希望と夢を抱えており、彼女の眼を通して仕事と周囲の人間関係が語られていきます。

元々の「凹組」は<大滝>・<黒川>、そして<醐宮純子>が立ち上げた事務所でしたが、<醐宮>は設立早々デザイン賞を受賞してすぐに独立、現在は「QQQ」という会社の社長として君臨しています。

小さなな「凹組」が参加した遊園地『慈極園』のコンペで、<凪海>が提案したキャラクターが当選、3人の小さな事務所の「凹組」では仕事がこなせないというもとで、<醐宮>の事務所に出向という形で<凪海>は出向きます。

<醐宮>との仕事の合間に、10年前の<大滝>・<黒川>・<醐宮>との関係が回想的に語られ、デザイン業界の裏側の世界が楽しめる一冊でした。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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『ジウ Ⅱ』誉田哲也(中公文庫)

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『ジウ Ⅱ』誉田哲也(中公文庫...
前作 『ジウ Ⅰ』 にて、9歳の<本木沙耶華>の誘拐事件を素早く制圧したSAT隊員の<伊崎基子>巡査は、巡査部長へと特進、決まりにより上野署の交通課に移動になりますが、マスコミ取材の攻勢を受け、轢き逃げ捜査から外れてしまいます。そんな時、フリーライターの<木原>から、誘拐グループの首謀者<ジウ>が、歌舞伎町に出没するというを噂を聞き、追い求めていきます。

一方<門倉美咲>巡査は、<沙耶華>の誘拐犯として拘留している<竹内>の取り調べを<東弘樹>警部補と組み取り調べを続けていますが、<新世界秩序>の思想を語る<竹内>に手こずりながらも、新たな情報を引き出すのですが、翌日彼は拘置所内で自殺をしてしまいます。

<伊崎>の行動と<門倉>の捜査を描きながら、突然「私」という人物が語る章が挟み込まれ、読み手になんだろうと疑問を投げかけるのですが、この「私」が<ジウ>の育ての親だとわかり、また闇の世界のフィクサーとして存在する人物でした。

首謀者<ジウ>の捜査中に、信用金庫に強盗・立てこもり事件が発生、犯人は<竹内>を<ジウ>に紹介した元自衛官の<西尾>だと判明しますが、SAT隊員が強行突入した際に爆破が起こり、隊員は全滅してしまいます。

エピローグでは、新しいSATの制圧一班の新隊長として<伊崎>が復帰、任命されるところで『ジウ Ⅱ』は終わりますが、「私」の伏線を知らされている読者には、この<伊崎>の移動自体が、不気味な前触れとして次作に引き継がれていきます。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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『the TEAM ザ・チーム』井上夢人(集英社文庫)

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『the TEAM ザ・チーム...
著者は、1982年のデビュー以後、<徳山諒一>と組んで創作ユニット<岡嶋二人>として活躍していましたが、1989年に発表された『クラインの壺』を最後に解散しています。

本書の『ザ・チーム』、エンターティメントととして面白く楽しめました。
霊媒師の<熊城あや子>は盲目で耳も聞こえにくいのですが、いまやテレビタレントとして超売れっ子で、個別の相談料は30分8万円にもかかわらず大人気を誇っていますが、実は相談相手のことを調べる専門スタッフを持っています。

スタッフはの<草壁賢一>は、ピッキングのプロとして相手方の住まいに侵入して秘密を探り当てる名人で、<藍沢悠美>は、パソコンに精通して情報を探り当てるのを得意としています。

<熊城>の霊感はインチキだという週刊記者<稲野辺>の執拗な取材を手玉に取りながら、それぞれの相談者に関する事件が8篇納められています。また<熊城>自身が盲目になった事件の真相も明かされ、夫婦や親子の問題を絡めながらの構成で、無断侵入などの犯罪性を忘れさせるほど、痛快な展開が楽しめた一冊でした。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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『はるがいったら』飛鳥井千砂(集英社文庫)

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『はるがいったら』飛鳥井千砂(...
登場人物はデパートで働く<水原園(その)>と、その弟で高校3年生の<佐々行(ゆき)>です。
9年前に両親が離婚、<園>は銀行員の母親に、<行>は中華料理店を営む父親と別々に暮らしていますが、父親は<行>と半年しか違わない義兄<忍>を連れた<真奈美>と再婚しています。

姉の<園>は何事においても完璧主義で、自己管理を徹底していますが、婚約者のいる幼馴染と不毛な恋愛を続けています。
弟の<行>は子供のころから体が弱く、高校も一年留年したことにより、中学の後輩だった<夏美>と同級生になり、大学の進路に悩んでいます。

<行>は9年前の春先に公園で拾ってきた雑種犬<ハル>の介護をしていますが、<行>が肺炎で入院、久しぶりに<園>が面倒をみることになり、二人の人世に転機とも思える出来事が進んでいきます。

老犬<ハル>を通して性格の違う姉弟の変化が微妙に描かれている青春小説で、著者は本書で2005年「第18回小説すばる新人賞」を受賞、作家デビューとしての一冊目でした。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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