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主人公は神奈川県警捜査一課の<真崎薫>です。
手配中の連続殺人犯<青井猛郎>をコンビを組んだ所轄の刑事<赤澤奈津>と追い詰めた<真崎>でしたが、<奈津>を庇ったことで深手をおい、1カ月ほど入院していました。
現場復帰も犯人を逃走させたことによりマスコミもうるさく、しばらく自宅療法を命じられ捜査から外されますが、裏社会の情報を通じて接点のある人物を探し出し、<青井>に迫っていきます。
<真崎>は5歳の時に一つ年上の兄を誘拐事件で亡くしており、迷宮入りになっています。
連続殺人犯の事件と並行して、<奈津>の父親が誘拐犯だとの事実を知ることになります。
父親の事実を知らされた<奈津>は自ら囮になり、<真崎>の犯人逮捕に望みをかけていきますが、<真崎>は刑事を辞める覚悟で違法的な解決でもって事件の決着を付けようとします。
警察小説の名手が描く、スリリングなストーリーが楽しめる一冊でした。
本屋さんの棚を独占するように場所を取っていた『おとなのねこまんま』という書籍。
「ねこまんま」という言葉が理解できるのかと思い、足が止まりました。
中身を見てみましたが、貧乏学生なら誰もが経験したことのある、ご飯の食べ方が写真入りで掲載されています。
玉子かけご飯などは定番でしょうが、身近にあるおかずをご飯にかけて食べるのは、一人暮らしの常とう手段だと思います。
やはりこのようなタイトルで書籍が売れるのは、飽食の時代を反映しているのでしょうか、考え込んでしまいました。
辺見庸氏の『もの食う人びと』の著作の中で、ベトナム(タイ?)のペットフードの工場のレポートがあります。日本に向けての生産ですが、工場で働いている彼女たちの日当よりもペット達が食べる缶詰の方が高いという事が指摘されています。
高価なペットフードを与えられる環境を含めて、食生活に困らなくなった時代を喜ぶべきなのかな。
駅に近いファッションビルの6階にある「成風堂書店」を舞台に、24歳のしっかり者の<木下杏子>と、推理の感が鋭いアルバイトの女子大3年生<西巻多絵>が、書籍や書店にまつわる事件の謎解きを中心に5話の短篇が収められています。
著者は13年間書店に勤務していた経験があり、書店業界の日常実務を細かく描きながら、ミステリー仕立ての謎解きが絡まり、この『配達あかずきん 成風堂書店事件メモ』がデビュー作品(2006年5月刊行)になります。
冒頭の『パンダは囁く』は、新潮文庫 < Yonda? Club > のキャラクターの「パンダ」が謎解きの中心になり、タイトルの『配達あかずきん』は、美容院や喫茶店などに配達する業務を軸に、天然ボケキャラの<吉川博美>が登場、結末を予想する読者を見事に煙に巻いています。
<成風堂書店事件メモ>シリーズとして、今までに『晩夏に捧ぐ』 ・ 『サイン会はいかが?』が刊行されていますので、また順次読んでみたい書店ミステリーです。
のぞみ22号に無事乗り込みました。春休みなのでしょう、子供連れが目立ちます。これから長い乗車時間ですが、先だってブログル仲間の<南極帰りの大城>さんが読んでいた、『最後の黄金時代が来た』を偶然本屋さんで目についたので、購入しました。東京駅までに、読みきる予定です。
ミステリー作家<島田荘司>の出身地である広島県福山市で、同氏を選者として開催された「第1回福山ミステリー文学新人賞」の受賞作品が、本書です。
小説の舞台は日本ではなく、ボストン郊外のコーバンという町を設定、イギリスから清教徒が移住した300年以上前にさかのぼる事件が伏線として描かれています。
3ヶ月前に交通事故に遭った11歳の少年<コーディー>は、事故の後遺症で人の顔が認識できない「相貌失認症」になり、コバーンの資産家であった<リリブリッジ>家の放置され朽ち果てた屋敷に忍び込みますが、そこで死体を焼く犯人を目撃してしまいます。
事件を担当したコーバン市警の<パロット>警部は、スタッブズ大学で「目撃証言の心理的研究」を行っている日本人の<トーマ>に助力を求め、<コーディー>との会話を通じて事件の真相に迫っていきます。
<リリブリッジ>家にまつわる300年前の魔女裁判、70年前に起こった列車事故で妻<マリオン>は失明、義理の妹とその娘が死亡し、一卵性双生児の弟<クロフォード>の射殺事件、40年前のヒッピーが屋敷内でLSDを過剰摂取で死亡した事件、そして今回の事件を絡めながら、心理学に関する博識な知識を駆使し、重厚な作品が楽しめました。
<新・旅情ミステリー>シリーズとして、柏木圭一郎の 『京都 大文字送り火 恩讐の殺意』 や風見修三の 『奥入瀬渓谷殺人情景』 などを読んできていますが、本書もその一環として「警察庁広域捜査官・梶山俊介」を主人公に据えて、日本の各地に出向いての捜査が描かれています。
秋田県角館で、日本刀による「辻斬り」的な事件で県議の娘<美奈>が殺され、<梶山>は部下の<叶野>とあわただしく現場に向かいますが、到着しますと<白咲>という整形外科医がすでに自首していました。
<白咲>は被害者との面識もなく、不審に思った<梶山>は妻<香奈>に背後関係を聞き取るのですが、要領をえないまま別れた夜に<美奈>と同様に日本刀で殺されてしまいます。
自首している<白咲>は明らかに誰かをかばっているのですが、捜査を進めてゆくなか、25年前に起きた一家心中事件が浮かび上がってきます。
整形外科医と「美への欲望」の<辰子伝説>を絡めた構成は、女心の本髄を付き、家族の悲劇に端を発する物哀しさ漂う作品でした。
医学の発達と共におおざっぱに括られていた障害の分類が、それぞれの特性に応じて細分化され、「広汎性発達障害(自閉症スペクトラム)」 や 「注意欠陥多動性障害(ADHD)」 ・ 「学習障害(LD)」などに分けられています。
本書は増える軽度発達障害の傾向が詳しく分析され、また歴史上の偉人といわれる<ニュートン>や<アインシュタイン>・<坂本龍馬>・<エジソン>などがみな(ADHD)であった逸話などを取り上げ、その特殊な才能を伸ばす教育環境の大切さを説かれています。
親の感情を踏まえながら、その子供にとって何が幸せなのかを成長過程に合わせて対処していく姿勢の大切さを、教育学<鈴木陽子>の立場と医学<金澤治>の立場から分かりやすく解説されていました。
主人公「みちのく麺食い記者」こと<宮沢賢一郎>は、大和新聞東京本社から左遷され、東北総局友軍担当として会津若松支局に出向中です。
大好きな蕎麦を食べているときに、田子倉ダム湖畔で、大手ゼネコン「鹿田建設」の副社長<薗田幸四郎>が他殺死体で発見された現場に出向くところから、物語は始まります。
事件を捜査していくうえで支局にアルバイトに来ている<坂内春香>を道案内に取材を始める<宮沢>ですが、東京勤務時代に知り合った捜査二課の<田名部>と協力しながら取材の途中、新たに<薗田>の部下<保科>も姿を消してしまいます。
会津を地盤とする代議士<稲本芳正>と、土木・建設業の利権絡みの二極対立に見えながら、実は古くからの因習がはびこる問題点を基盤とした社会派ミステリーとしての重みが心に残る一冊でした。
『ジウ Ⅰ』 ・ 『ジウ Ⅱ』 と続き、本書でシリーズが完結します。
前作でSATの制圧一班の新隊長に任命された<伊崎基子>は、信用金庫強盗事件の強行作戦で壊滅的な被害を受けた部隊を立て直すべく、5名の新人メンバーと共に、新宿の街頭演説をする総理大臣の警護に当たります。作戦通り、暴動にまぎれて<伊崎>以下5名のメンバーは総理大臣を拉致、歌舞伎町に監禁して立てこもり、政府に対して歌舞伎町を「新世界」の名称で治外法権を要求してきます。
大きな企みを持つ「私」(=ミヤジ)に洗脳されている<伊崎>は、歌舞伎町で捜査をしていた刑事たちを射殺してしまいますが、隊員との会話で、自分が騙されて仲間に引き込まれたことを知り、首謀者の<ミヤジ>と<ジウ>に対して反撃に出ていきます。
一方<東弘樹>警部補は、SATの<小野>隊長や公安部の<間山>等を通じて警察内部に密告者がいることを突き止めて炙り出す作戦を成功させ、治外法権を目論んだ歌舞伎町の暴動を解決、首謀者<ミヤジ>と誘拐犯の主犯<ジウ>の野望はつぶれてしまいます。
最後まで<伊崎基子>に寄り添うとした<門倉美咲>でしたが、<ジウ>の死に間際の台詞から彼の心を理解し、憐憫な思いで誘拐事件に端を発した野望を振り返ります。
大学を卒業、大手銀行に勤めながらアトピーに患い故郷に戻ってきた<紺屋長一郎>は、チャット仲間の<GEN>の薦めもあり、犬を専門に探す調査事務所を開設しますが、同級生の役所に勤める<大南>の口コミで来た依頼主は「探偵事務所」として訪問してきます。
<大南>の紹介で訪れた依頼主は、孫の<佐久良桐子>が東京から行方不明になっているので探してくれという失踪人調査であり、また二人目は地元の神社に伝わる古文書の解明でした。
高校の剣道部の後輩<半田平吉>(ハンペー)は探偵稼業にあこがれ、歩合制の所員として入り込み、古文書の件を調査し始めます。
片田舎を舞台に、<紺屋>の女性の失踪事件と<ハンペー>の古文書の調査内容が重なり合い、事件は思わぬ方向に展開していきます。
チャット仲間<GEN>とのやり取りや、<桐子>の失踪の原因が彼女が開設しているブログが問題となるなど、現代社会の様相を捕えながら、田舎の時代歴史的な要素を絡ませての構成で、面白く読み終えれました。
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