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<堂場瞬一>の〈日本の警察〉大河シリーズとして三カ月連続刊行として、第1作目『焦土の刑事』に次ぐ第2作目が本書『動乱の刑事』で、2022年5月13日に文庫本が発売されています。
終戦間際の連続女性殺害事件を解決した捜査一課の高峰でしたが、戦後も7年が経った1952年、サンフランシスコ講和条約発効直前。東京都内の駐在所が爆破されます。死者は二名。ひとりは駐在巡査、もうひとりの身元は不明でしたが、近隣にある印刷工場の社員「牛島」と判明します。
35歳になった刑事の「高峰靖夫」は、共産党過激派の関与を疑いますが、秘密主義の公安から情報がえられず、捜査は難航します。「高峰」は、親友で戦中の特高から公安に所属している中学校の同級生「海老沢」に協力を仰ぎ、共同戦線を張って事件の真相と犯人逮捕に捜査を進めますが、あくまで個人への犯罪として捜査する「捜査一課」に対し、事件を利用し過激派の瓦解を目論む「公安一課」という相反する立場が、ふたりの関係に亀裂が入り始めます。
捜査の過程で、爆死した「牛島」は公安が共産党の分裂組織「革命軍」に潜入させた景観「安沢」だと判明しますが、公安は一切情報提供をしません。戦後の時代の乱れが、警察という「立て組織」と公安の隠ぺい体質の矛盾を生み出していく過程が、一つの爆破事件と会社の組合活動を背景に克明に描かれています。
戦後警察の光と闇を炙り出す一大叙事詩
著者の<堂場瞬一>は好きな作家としてかなりの作品を記録としていますが、2018年7月19日に単行本が刊行されています『焦土の刑事』が、文庫本として、2022年4月15日に発売されています。壮大な警察大河シリーズになりますので、楽しみに文庫本化を待っていました。
戦争末期の1945年、B29による空襲の翌朝、ビルの地下防空壕で若い女性の遺体が発見されます。首には刃物による切り傷があり殺人事件でした。京橋署刑事の「高峰靖夫」は署長「富所」から「捜査中止せよ」という思わぬ言葉を聞かされます。警察上部による殺人事件のもみ消しが行われ、そしてまた京橋署管内で同じように若い女性が防空壕で刺殺体で見つかります。「高峰」は、中学からの同級生で特高に籍をを置く「海老沢」の協力を得て、終戦をまたいで「戦時下の殺人」の犯人を追い詰めていきます。
小説の書き出しが舞台の台詞で始まりますが、犯人逮捕時に生きてくるいい構成でした。
「高峰」と「海老沢」の共通の趣味である〈演劇〉を戦争中の特高の理不尽な検閲問題を絡め、戦中から戦後の世相を背景に、「殺された人間がいるとしたら、犯人を捕まえる」という刑事の正義を貫く「高峰」と特高としての仕事に意義を見出せない「海老沢」、そして戦地に出向き戻ってきた「小嶋」との中学同級生の人生が絡まり、新たなる昭和史として今後の展開が楽しみです。
ただ、犯人逮捕で事件は解決したものの、警察組織の階級社会として「富所」署長に捜査中止を命令した人物との流れが未消化で残っているのが気になりながら読み終えました。
<原田マハ>による『異邦人』(いりびと)は、『文蔵』に2012年5月号から2014年4月号までに連載されたのち、単行本が2015年2月24日刊行され、2018年3月8日に文庫本が刊行されています。同年、京都が舞台ということもあり第6回京都本大賞を受賞しています。
また、2021年11月28日より、<高畑充希>主演でWOWOWプライム「連続ドラマW」として全5話にて放送されています。
「たかむら画廊」の青年専務「篁一輝」と結婚した有吉美術館の副館長「菜穂」は、東北で発生した原発事故の放射能の影響を考え、出産を控えて東京を離れ、京都にホテル生活から、書道の大家「鷹野せん」の家に移り住んでいました。
妊婦としての生活に鬱々とする「菜穂」でしたが、気分転換に出かけた老舗画廊「美のやま画廊」で、一枚の「青葉」の絵に心を奪われます。強い輝きを感じさせるその絵の作者は、まだ無名の若き女性画家「白根樹」でした。
京都の四季と美術界の因習とを絡め、彼女の才能と「美」に翻弄される「菜穂」の周りの人々の隆盛と凋落を艶やかに描いています。
<小杉健治>の著作には、〈弁護士〉「水木邦夫」・〈検事〉「<江木秀哉>」を主人公とする作品が多々ありますが、本書『奪還』は〈弁護士〉「鶴見京介」を主人公とするシリーズ13作目になり、文庫本書下ろしとして、2022年4月30日に発売されています。
「有原和樹」の妻「恵利」が自宅で殺害されていたのを、「和樹」は居酒屋から帰宅して発見します。「恵利」とは7年前の流産以後夫婦仲が悪くなり、居酒屋でのアリバイが証明されなかったため、「和樹」が逮捕されてしまいます。
「和樹」から弁護を依頼された「鶴見京介」は、「和樹」が犯行時刻に居酒屋でアイヌの楽器「ムックリ」を持った男と相席したという言葉を信じます。調査員「洲本」を使い探し出したその男「浜尾雄一」は、「和樹」を覚えていないと答えた後、会社を辞めアパートを出て姿を晦ましてしまいます。
証言できない事情があるとにらんだ「鶴見」は、「ムックリ」から手掛かりを求め北海道へ出向き、20年前にさかのぼる別事件を解きほぐしながら、殺人事件の真相に迫っていきます。
冤罪を晴らすためには、手弁当で駆け回り努力を惜しまない「鶴見」の活躍が本書でも楽しめました。
元警視庁、公安部公安総務課、内閣官房内閣情報調査室等の経歴を持つ著者<濱嘉之>の作品は、小説という楽しみ以上に、現在の日本の立ち位置を知る上での情報に満ち溢れていますので、残らず読破してきていると思います。
本書『群狼の海域』は、「警視庁公安部・片野坂彰」シリーズとして『紅旗の陰謀』に次ぐ4冊目として、今という瞬間に関わる世界情勢が命のために、文庫本書下ろしとして、2022年4月10日に発売されています。
地方公務員への国際結婚斡旋にロシアンマフィアが絡んでいるという情報に基づき。警視庁公安部の「片野坂彰」率いる精鋭チームがさらに調査すると、日本の防衛情報が盗まれている危機が判明します。世界中に散り情報収集するメンバーらに「ロシアー中国」連合が敵対していきます。「片野坂」は、日本海における「ロシアー中国」とうの潜水艦の動向に注目、4人しかいないチームで、「ロシアー中国」との諜報活動でもって、決戦の場を日本海に定めて一泡吹かせる作戦に出ます。
シリーズの特色である、世界情勢の分析、並びに政治問題が楽しめる内容で、「酒トグルメ」も登場、気にかけている「中国恒大集団」の問題や「習近平」や「プーチン」・「メルケル」なども話題として登場していますので、最後まで幅広い展開が楽しめました一冊です。
本書『雨に消えた向日葵』は、2019年9月に単行本が刊行され、2022年3月10日に文庫本が発売されています。
著者<吉川英梨>は、『アゲハ 女性秘匿阿捜査官 原麻希』から始まる〈ハラマキ〉シリーズに始まり、女性公安官「黒江律子」を主人公に据えた『十三階』シリーズ、元警視庁の刑事「五味京介」が教官の〈警視庁53教場〉シリーズなど、警察を舞台にしている作品が多く、気になる作家の一人です。
埼玉県坂戸市で小学五年の美少女と評判の「石岡葵」が失踪した所から事件は始まります。最後に目撃されたのは豪雨の中を、小学校からひとりで帰宅するために歩く姿でした。現場には傘一本しか残されていませんでした。
誘拐か、家出か、事故か。「葵」が一か月前に同じ場所で男につきまとわれたという姉「沙希」の供述を受け、県警捜査一課の「奈良健市」も坂戸市に急行します。
二転三転する証言、電車内で発見された「葵」の私物、少女に目を付けていたという中学生グループ4人組。担任教師の児童ポルノ趣味、情報が錯綜し、捜査本部も縮小され家族が激しく焦燥に駆られるなか、2年後に捜査本部も解散となり、「奈良」刑事の執念の捜査で、思わぬ手掛かりから真相に迫っていきます。
『花酔い』以来久しぶりになる<村山由佳>の『嘘 Love Lies』です。2017年12月に新潮社より単行本が刊行され、2021年2月1日に文庫本が発行されています。
幼い頃に養父を亡くし、母「江梨子」の愛人「南条」から日常的に暴力を受けていた「刀根秀俊」に、中学二年のクラス替えの班分けで初めて気の置けない仲間ができます。近くの席になった「桐原美月」、「中村陽菜乃」、「正木亮介」です。
4人で過ごす時間は、「秀俊」にとってかけがえのないものでした。しかしその年の夏休み、「陽菜乃」に強姦事件が起こります。ヤクザの親分「九十九」に子供のころから〈ヒデ〉と呼ばれていた「秀俊」は、強姦魔を見つけることを「九十九」に依頼、ある日復讐を決意した仲間3人は、犯人と対峙、「亮介」は手違いで犯人の男を殺害してしまいます。「陽菜乃」に事実を隠し、想像を絶するような悲劇に4人の人生は一変してしまいます。
それから二十年。大人になった「秀俊」は、「九十九」の依頼を断れることができず暴力の連鎖から抜け出せないままヤクザ組織の手下となり、彼を思う「美月」とその娘「真帆」、そして「陽菜乃」と「亮介」もまた、いまだ秘密と後悔にもがき続けていました。絶望の果てに辿り着く、20年行方不明の母「江梨子」に関係する人間関係が最後に待ち受けている究極の愛の物語でした。
<堂場瞬一>の「ラストライン」シリーズの第5作目となる『悪の包囲』は、文庫書下ろしとして2022年3月10日に発売されています。 第1作『ラストライン』では定年10年前の50歳でしたが、本書では54歳になっています。
警視庁サイバー犯罪対策課の<福沢一太>が、自宅マンションの部屋で殺害されます。本書の主人公である本庁を離れ立川中央署に移動した〈ガンさん〉こと「岩倉剛」の事件に関する異様な記憶力に目を付け、研究材料にしようと「岩倉」の離婚協議中の妻との共同研究で執拗に誘いをかけてきていた男でした。過去の因縁に加えて、事件の直前に本庁の食堂の中で小競り合いまで演じていたため、「岩倉」は容疑者扱いされ捜査本部からも外れざるを得なくなります。
20歳年下の恋人「赤沢実里」と共にいたという殺害時のアリバイがありながら若い女優ということで表に出せず、自らの潔白を証明するために独自に捜査を進める「岩倉」でしたが、尾行者にけがを負わされる羽目に陥ります。やがて事件の背景に、「岩倉」の宿敵ともいうべき謎の武器密売組織「METO」の存在が浮かび上がってきます。
「ラストライン」シリーズ全体を貫く横糸とも言うべき「METO」との戦いがまたも勃発。思いがけぬ「METO」からの反撃に、「岩倉」と仲間たちはどう立ち向うのか、手に汗握る攻防が繰り広げられます。
著者お得意の他シリーズの主人公たち、『警視庁失踪課』シリーズの「高城賢吾」・『刑事・鳴沢了』シリーズの「鳴沢了」・『アナザーフェイス』シリーズの「大友鉄」たちが脇役として登場してきますので、著者のファンはいつも通りニンマリと楽しさ倍増の一冊でした。
著者<笹本稜平>(1951年10月9日 ~2021年11月22日)は好きな作家で、本読書記録で10冊以上は取り上げていると思います。残念ながら昨年末に亡くなられていますが、訃報は今年になってから発表されています。
本書『転生 越境捜査』は、『孤軍 越境捜査』に次ぐ「越境捜査」シリーズ第7作目として2019年4月に単行本として刊行され、2022年2月12日に文庫本が発売されています。
<宮野>が刑務所から出所したばかりの元窃盗犯の老人「葛西」が告白した30年前の殺人事件。その被害者は日本を代表する大企業の会長「槙村」だといいます。現在も企業の会長として存命のはずですが、「葛西」老人は、今の会長は、相方の「原口」が成りすました別人だとのことを<鷺沼>に連絡してきます。そして、伝え聞いた老人の告白と時を同じくして、住宅の解体工事に伴い空き家の床下から30年前の白骨死体が見つかります。
事件性を感じた警視庁特命捜査の<鷺沼>と神奈川県警の<宮野>の刑事コンビが金銭の絡んだ事件の捜査をはじめると、「槙村」がなりすましの偽物だとスクープ記事をまとめていたルポライター「川井」の死体が発見され、俄然と事件性が増すなか、捜査と裏稼業を伴うタスクフォースのメンバー(鷺沼・宮野・三好・井上・山中綾香・福富)が動き出します。
解説を含んで553ページの大作。最後まで結末が分からないまま、一気に読ませる構成はさすがです。著者の作品として「越境捜査」シリーズは第8作・第9作がありますので、文庫本での発売を気長に待ちたいと思います。
この『歩道橋シネマ』は、『図書室の海』『朝日のようにさわやかに』『私と踊って』に続く、著者にとって7年ぶりの4冊目となる(連作を除く)短篇集です。〈小説新潮〉に発表した11篇を中心に、全18篇が収められています。
SFもファンタジーもホラーもミステリも青春小説も自由自在に書き分ける多彩な技量の持ち主なので、どんな話になるのか、書き出しからはまったく結末が想像できないのが特徴として、どの短編も読者の〈思い込み〉を巧妙に利用していて、こういう小説だなと決め込んで読んでいますと見事に足をすくわれる作品が楽しめます。
個人的には『球根』・『楽譜を売る男』・『降っても晴れても』など、ブラックユーモア系が秀逸でした。
ニタリとする各編の感想はネタバレになってしまいますので、省略させていただきます。興味ある方は、巻末の著者あとがきとして、作者自身により18編の短いコメントが掲載されていますので参考にして、驚きの感覚を味わってみてください。
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