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<宮部みゆき>の著作は、ミステリー・ファンタジィー・時代物と幅広く、本書は江戸を舞台とする<三島屋変調百物語>シリーズの5巻目になります。
<三島屋変調百物語>は、川崎宿の旅籠の娘<おちか>を主人公とし、、とある事情から江戸で袋物屋「三島屋」を営む叔父夫妻の元へ行儀見習いとして身を寄せています。しかし店主の身内として習い事に励むよりも、女中として忙しく働くことで自らの過去を頭の隅へと追いやろうとしていた。
ある日、叔父の<伊兵衛>が急な所用のため、訪問が予定されていた客への対応を、<おちか>に任せて外出してしまう。他人に心を閉ざしているおちかは不安に駆られるが、自分を信用してくれた叔父のためにも、客に非礼があってはならないと覚悟を決める。
客は、庭に咲く曼珠沙華に恐れおののくが、<おちか>に対して自分の過去にまつわる怪をぽつり、ぽつりと話し始める。
帰宅後、<おちか>から事の顛末を聞いた<伊兵衛>は、江戸中から不思議な話を集めるとして、<おちか>にその聞き役を務めるよう言い渡すのでした。
本書でも三島屋の「黒白の間」で客の話を聞くというのは変わりませんが、次の間に守り役として控えていた女中の<お勝>と三島屋の次男坊<富次郎>のうち、次男坊が<おちか>とともに客の話を聞き、それをちなんだ絵を描くという趣向が加わります。
本書で百物語の27話まで進み、<おちか>が百物語を始めなければならなかったトラウマの解消と、今後の展開が楽しみなシリーズです。
本書は、『撃てない警官』 に始まる<柴崎令司>シリーズに次ぐ、<疋田務>シリーズの3作目です。
赤羽署管内の教会とスポーツジムにおいて、身元不明の認知症と思われる老人4人が突如として出現。マスコミにて情報公開されますが、家族は一向に名乗り出てくる気配もなく、生活安全課の<疋田務>と<小宮眞子>は、彼らの会話の訛りと指先の怪我で工場関係者ではないかとのあたりを付けて、宇都宮の工場団地へと出向きます。
老人ホームや工場関係をシラミつぶしの聞き込みのなか、一人の身元が判明。やはり工場勤務の経験がありました。
なおも企業組合の事務局にて捜査を進めていくうえで、組合の企業年金に絡む横領事件が判明します。犯人と思しき事務長<田中>は行方不明。<疋田>たちは、横領事件と老人の拉致事件が絡んでいるとして、捜査を進めていきます。
タイトルの「彷徨」は、認知症特有の「俳諧」を意味しているようで、現代社会を反映した事件構成に考えさせられる一冊でした。
本書『純喫茶「一服堂」の四季』は、 『謎解きはディナーのあとで』 で2011年本屋大賞を受賞した<東川篤哉>による、喫茶店を舞台にしたユーモアミステリーです。
タイトルの「四季」が表すとおり、春夏秋冬4つの事件が納められています。密室で十字架に磔にされた大学教授「第一話 春の十字架」。農家の納屋で首に蛇が巻き付き磔にされた地主「第二話 もっとも猟奇的な夏」。浴室で頭と両手首のない状態にされた作家のアシスタント「第三話 切りとられた死体の秋」。完全に施錠された家屋で惨殺された兄弟「最終話 バラバラ死体と密室の冬」。
古都鎌倉にひっそりと佇む喫茶店「一服堂」の美人店主<ヨリ子>は、客が入店したのを察知した途端に赤面し、どもる恥ずかしがり屋で、極度の人見知りでアガリ症ですがオーナーとして客の前に立ち続けます。だが、未解決事件の話を聞けば態度が豹変し、並外れた推理力で4つの事件の謎に迫っていきます。
雑誌記者<村崎蓮司>、独身女<天童美幸>、売れない作家<南田五郎>、女刑事<夕月茜>が<ヨリ子>のもとに事件を持ち込み、彼女の前で事件の真相解明を試みます。ところが、彼らの推理を傍らで聞いていた<ヨリ子>は突然客を睨みつけ、「甘いですわね!まるで『一服堂』のブレンド珈琲のように甘すぎますわ。もう少し苦みの利いた推理をお聞きしたかったのですが、わたくし、すっかり失望いたしました!」と、客の推理と自ら淹れた珈琲の味に毒舌を吐く。「安楽椅子」と書いて「アンラクヨリコ」と読ませる彼女の名探偵ぶりが、そこから発揮されます。
何と言っても、エプロンドレスのメイド姿をした美しい<ヨリ子>の豹変ぶりが強烈。キャラの設定、会話のやりとり、トリックの斬新さと言い、サクサクとテンポよく、飽きることなく楽しませてくれます。事件の被害者の描写は凄惨であるにもかかわらず、笑えるポイントが散りばめられています。
本書を読みながら、<岡崎琢磨>のユーモアミステリー 『珈琲店タレーランの事件簿』 や、<折口良乃>の 『汐汲坂のカフェ・ルナール』 を思い出していました。
堂場瞬一は好きな作家のひとりで、<警視庁失踪課・高城賢吾>シリーズ、<汐灘サーガ>シリーズ、<警視庁追跡捜査係>シリーズ、<アナザーフェイス>シリーズ、<捜査一課一之瀬拓真>シリーズ、<警視庁犯罪被害者支援課>シリーズといった警察物を読み継いできています。
2001年のデビュー作『8年』で、第13回小説すばる新人賞を受賞したのは警察物ではなく、野球の世界を描いています。その後の『八月からの手紙』(2011年6月刊行)へと続き本書はその同系列にある作品といっていいのではないでしょうか。
20年以上かかわりがなかった父が亡くなり、作家である私<本谷要>は、遺品整理中に、マイナーリーグの「サクラメント・ゴルドハンターズ」のユニフォームを着た父<総一郎>の写真を見つけます。日本のメジャーリーグの初めての選手は、<藤原雄大>であり、それ以前の写真であることに作家として息子としても興味を引かれ、記録を調べますが、<本谷総一郎>の名前を見つけることはできません。
厳格で仕事一筋の人生を送り、野球の話などしなかった父。死亡を知らないアメリカ人記者からメールが届き、<要>は父の過去を探り出すべくアメリカに出向いていきます。
父親と息子の対立を根底に野球を通してそれぞれの人生観がキャッチボールを返すように描かれていきます。特に父の目線で描かれていく野球の描写は秀逸で、野球好きの著者をよく物語っていました。
野球ファンには、ぜひ読んでいただきたい感動の一冊です。
著者の作品としては、第48回吉川英治文学賞作の 『海と月の迷路』 以来久しぶりに手に取りました本書です。
裏社会の大物である祖父の威光を頼りに、夜の世界で遊びまくっていた<望月拓馬>は、ヤンチャが過ぎさらわれて殺されかかりますが、祖父の息のかかったマンションの管理人助手として、無事に1年間勤めあげれば、自由になれるという条件で管理人<白旗>のもとで働き始めます。
そのマンションは、いわく因縁がある住民専用で、住民のプライバシーの確保優先はあたりまえ、死体が出れば回収処分作業も行われる高額な賃貸マンションでした。
プロの殺人者、もぐりの医者、詐欺師、亡命した独裁者など極悪住人相手の管理業務が、無事に1年間殺されずに全うできるのか、<拓真>と<白旗>絶妙なコンビで楽しませてくれ、軽妙洒脱な文体で最後まで気楽に読め、>『海と月の迷路』のような「重い」内容ではありませんでした。
前シリーズの<古着屋総兵衛影始末>は、全11巻で完結でしたが、この<新古着総兵衛>シリーズは、『地に非ず』(2011年1月28日刊行) で始まり、本書で16巻目になります。
<信一郎>を船団長とする交易船団は、<総兵衛>の母<恭子>の安否を確かめ、オランダとの交易に入ります。新たな交易船「カイト号」の建造という使命を負っていた<信一郎>でしたが、<恭子>の働きもあり、建造途中で倒産した注文の船を引き継げば建造日数も短縮されるということで、<信一郎>は大きな決断を下します。
かたやえどでは、恒例の「古着市」の準備で忙しい大黒屋ですが、偽の関東八州取締りを騙る金銭サギが横行しているとの噂があり、<総兵衛>たちはそれとなく各所に探りを入れます。
ある夜、それらしき一段と遭遇、<総兵衛>は、祖伝来夢想流を使い。幸若舞の「敦盛」を謡いながら、相手をまつり去り、何事もなかったように「古着市」を終わらせます。
タイトル通り、新米刑事として 『ルーキー』 で登場した<一之瀬拓真>シリーズとして、捜査一課畑の刑事としての成長が描かれ、『奪還の日』 に次ぐ第6作目が本書です。
前作で<深雪>と結婚した<一之瀬>ですが、本書で、妻<深雪>は出産まじかになっています。
<一之瀬>は、移動してきたばかりの係長<大城>と馬が合わないなか、芸能プロダクション勤めの<小田彩>殺人事件の被疑者<高澤>を、事情聴収後に逃亡させるという失態のカバーに駆り出されます。
<高澤>が犯人とする決定的な証拠がないなか、自殺体で発見されますが、のちにアエイバイが確認され、捜査上に芸能プロダクションの社長であり、一世を風靡したバンドのメンバーだった<田原ミノル>との不倫問題が浮かび上がってきます。
音楽業界の裏側を捜査中、<一之瀬>は暴力団関係者に襲われるという闇の部分に首を突っ込んでしまいますが、粘り強い捜査で事件を解決、娘<真奈津>が生まれます
ギターへの思い入れがある著者らしくギターに関する描写が細かく 『夏の雷音』 を思い出していました。
明治18年創業の古本屋「東京バンドワゴン」を舞台として<堀田>家4世代に渡り繰り広げられる、下町人情話のシリーズの第11巻目が本書です。第一巻目のタイトルは『シー・ラブズ・ユー』であり、各巻とも楽曲のタイトルが付けられています。
4世代に渡る家族ということで登場人物の数も多く、巻頭につけられている家族の相関図が役に立ちます。
短編4篇がおさめられており、物語の進行は語り部として、現古書店の2代目店主<勘一>の亡くなった妻<サチ>が務めています。
古書店が舞台ということで、創業者の<達吉>が残した「呪いの目録」やイギリスの古書店との騒動を中心に、古書をからめ、孫の幼稚園仲間への思いやりなどが人情味豊かに描かれています。
シリーズものですので、登場人物たちも併せて年齢を重ねていきますので、それぞれの登場人物たちの性格付けも面白く楽しめ、今後の展開がどこまで続くのかと気になるシリーズです。
著者の作品は、『天使の屍』 ・ 『後悔と真実の色』 と読んだ数は少ないのですが、人生に絡む重いテーマを扱っているように思え、本書も「んん~」という感じで読み終えました。
主人公<峰岸晄>は、父親は一時は不動産で儲けたこともある殺人者で、水商売の母親とは死に別れ、ラーメン店を営む母方の伯父に引き取られ、いとこの<慎二>とともに育ちます。心を閉ざし、他社との接触を避けるようにしていましたが、学校では万引きをさせられる陰湿ないじめにあっていましたが、同級生の<木下怜奈>だけは救いの手を差し伸べようとします。
高校を卒業後<晄>は、サラ金業にたずさわり、その後不動産詐欺師の道へと進んでいきますが、その背後には、驚くべき復讐劇が隠されていますが、読者には最後まで真相は明かされず、一気に驚愕の結末に誘い込まれます。
<晄>の悲惨な幼少のころの生活状態が克明に描かれているのが、本書の大きな伏線だったと、読者は最後に納得しながらも、彼のすさまじい生き方に、唖然とさせられました。
聴きなれない単語「逢魔」とは、魔物に出会うことを意味しています。
大学4年生の<高橋真矢>は、映画研究会に在籍、自主製作映画を夢見てしゅうかつもせず、文学部の大学院生を目指しています。撮影技術を買われ、民俗学の准教授<布目悟>の現地調査の助手となります。
本書には、3篇が納められており、「座敷わらし」・「かっぱ」・「天狗」の現地調査に出向く先々の二人の珍道中が楽しめます。
民俗学といえば、好きな作家の<北森鴻>の <蓮丈那智フィールドファイル> を思い出しますが、こちらは、美麗の東敬大学助教授<蓮丈那智>とその助手<内藤光國>が現地調査先々で起こる殺人事件を解決する推理小説ですが、かなり深い民俗学の知識に基づいていますので、読み応えがあります。
本書は、風采の上がらない<布目>と空手女子の<真矢>の珍道中が楽しめる構成で肩を張らずに気軽に楽しめました。
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