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物語の舞台は、文化13(1816)年頃の第11代将軍徳川家斉の治世です。
江戸は千駄木町の庭師一家「植辰(うえたつ)」で、浮浪児として7歳の時に親方の<辰蔵>に引き取られ、修業中の<ちゃら>が主人公です。
生まれた在所も名前も分からない孤児として、「ちゃんちゃらおかしい」が口癖で、そこから<ちゃら>と呼ばれています。
「植辰」には、親方の娘<お百合>、庭師の<福助>、庭石の専門家<玄林>がおり、家族的な雰囲気の中で職人としての仕事をこなしているのですが、<辰蔵>の京都での修業中に関係ある<白陽>の登場で、物語は一変ミステリーな雰囲気に包まれていきます。
作庭が絡む話しですので、大好きな木々や植物の名前、庭に対する職人の考え方などが生き生きと描かれてており、これは素敵な作家と巡り合え、今後の作品に要注意です。
本書は東京湾北部、埋立地の「お台場」と呼ばれる島を中心とする臨海副都心部が直下型の地震を受け、東京は絶滅的な打撃を受けてから4年後が舞台となっています。
ある日、元刑事の<巽丑寅>は、黒人の少年<丈太>と出会い、震災直後に姿を消していた無国籍と呼ばれる子供たちが、急に街で見かける機会が多くなったことに興味を持ち、元上司である少年課担当の<鴻池みどり>に話しを持ちかけます。
その頃の東京は、若くして都知事になった<岩佐紘一郎>が復興という名目で、なぜか「お台場」を完全に封鎖し、軍隊まがいの「国土復興協力隊員」を創設、都民が立ち入らないように監視下に置いていました。
震災後に生まれた貧富の差のある生活環境と、不法滞在者の子供として無国籍な子供たちの立場を縦軸に、殺人事件を追う<みどり>の捜査を横軸として、また<岩佐>を取り巻く政治的陰謀とが絡み合い始めます。
文庫本549ページと少し厚めでしたが、第30回横溝正史ミステリー大賞受賞作として、弱者に対する社会問題を考えさせられると共に、近未来小説として楽しめました。
自衛隊員として日本の防衛を守るべく特殊部隊「バッドボーイズ」を編成・訓練していた<河合斌(たけし)>は、北朝鮮の工作船に対しての作戦を否定され自衛隊を辞め、フイリピン・ダバオ市にてダイバーズショップを経営する傍ら、地元マフィアからの依頼の仕事でも「正義」があるとおもわれる汚れ仕事をこなしていました。
ある日<国交なき医師団>の日本人女性医師<折原雪乃>が、地震で多くの被害者が出たフィリピン・コタバト市にて拉致され、行方を探す仕事を請け負います。
一度は監禁場所から<折原>を救出しますが、仲間の裏切りによりタンカーにより国外へ逃亡を許してしまいます。
そんな折、もと自衛官の同期から、与那国島に60名を超える人質を楯に引きこもる武装集団の偵察を依頼され、<河合>は昔の「バッドボーイズ」のメンバーと共に特別任務として与那国島に向かいます。
元特殊部隊員が主人公ですので、軍事的な知識と政治的な問題が絡み合い、また海を舞台とした横軸がうまく絡みあい、緊張感あふれるサスペンスとして楽しめました。
これはなんとも「痛快な」構成で、犯罪ミステリーの範疇なのですが、娯楽小説としての構成も見事で、楽しめました。
登場人物たちはどうしようもない最低の人間たちなのですが、結末が見えない中、最後まで一気に読ませてしまう面白さがありました。
サウナの受付のアルバイトをしている<赤松寛治>は、60歳。5年前に父親の跡を継いだ理髪店を閉店、まだらぼけの母親とパートの奥さんと生活していますが、夜中に来た客の忘れもののザックの中に現金が詰まっているのを見つけてしまいます。
刑事でありながら暴力団から金を借りている<江波戸良介>は、横領した知人の金を盗み取る算段をしなければ、自分の身が危ない状況に追い込みを掛けられています。
金儲けにと手を出した「FX」で大損をし、サラ金から借りた金を返すためにデリヘルで働いている主婦<庄田美奈>は、デリヘルに来た若い男に自分の暴力亭主を殺すように話しを持ちかけます。
人間の弱さと限りない欲望が交差する、秀逸な一冊でした。
<警視庁公安部・青山望>シリーズも、第1作目の 『完全黙秘』 から第4作目になりました。
長崎・平戸に中国人5人の射殺死体が乗った難破船が漂流するところから物語は始まります。
船内の遺留指紋から、ひとりの人物が浮き上がり、事件情報を入手した<青山>は、持ち前の情報網を駆使して事件の調査を始めるうちに、琵琶湖でも死体が発見されます。
一見つながりのない殺人事件にみえたのですが、第3作目の 『報復連鎖』 に登場した青森県大間の原発工事と絡み、香港マフイアと東北マフイアの抗争に、歌舞伎町の裏社会、中国との政治問題を絡ませながら最後まで目が離せない展開が繰り広げられます。
中国の空気汚染と水の汚染問題を底辺に、日本側の特許技術の機密が絡み、警察小説ながら著者の中国に対する政治的姿勢も垣間見られて面白く読み切りました。
今年の読書も、切りのいい(50)冊目になりました。
少し息抜きの意味を込めて、タイトルに「神戸」が付いている西村京太郎の推理小説です。
観光会社の企画した「日本の異国」という神戸の街を巡る豪華ツアーに参加した6人の参加者の内、異人館巡りの観光中にひと組の夫婦が姿を消し、二日後に夫が半径25メートルの円の中心で「公開処刑」され、続けて妻も同じ状況の中で殺されてしまいます。
ツアーの参加者はみな阪神・淡路大震災で被害を受けている人たちばかりで、犯人の動機は倒壊した瓦礫のなかに両親が埋まり、通りがかった夫婦に助けを求めたが無視されたという逆恨みでの犯行なのですが、神戸市民としては違和感を覚えてしまいました。
あの状況下の中で、逆恨みを持つような心情は考えられず、やはり被災者でない作家の机上の発想だなと、いい印象は持ち得ませんでした。
限られた登場人物のなか、参加者の連絡先を知りえる立場と、仕事中のアテンダントの女性が異人館観光中に恋人に電話をする場面を重ね合わせますと、すぐに犯人が読めてしまう組み立てもいただけませんでした。
主人公の<矢上>は、タイトルでは「教授」となっていますが、実際は70歳のミステリーファン、生物総合学部の担当の日本古典文学担当の非常勤講師です。
舞台は夏休み中のとある大学の取り壊し寸前の5階建ての研究棟が、大雨と落雷で停電、エレベーターも止まり携帯電話も使えない中、非常階段も開かない状況で、見知らぬ男が殺されているのが発見されます。
民族楽器の破損、表彰状の入っていた筒だけが見つかるなど、一見何気ない些細な事件が導入部から続き、読み手側としてどう展開するのか疑問に感じながら読み進めましたが、最後に一本につながる構成はなるほどと「生物総合学部」を舞台にした意味合いが理解できました。
密室殺人事件を大きくとらえた研究棟全体の登場人物たちの行動を、昼過ぎの落雷停電から事件解決までの半日が、計算されつくした構成で楽しめました。
第56回江戸川乱歩賞受賞作品で、単行本としては2010年8月の刊行になります。文庫化の際、「余分な情報がないから読者を限定せずに想像力を刺激してくれる」という選考委員と著者の一致した判断により『再会』という漢字2文字に改題されています。
物語の主軸には、小学校6年生の時に起こった銀行強盗事件に関連した拳銃を校庭にタイムカプセルとして埋めた4人、<岩本万季子>・<清原圭介>・<佐久間直人>・<飛奈淳一>が23年後、それぞれの人生を歩んでいた彼らに、<直人>の義兄がタイムカプセルに隠していた拳銃で射殺される事件をきっかけに4人が再会します。
タイムカプセルの埋めた場所と暗証番号は4人だけしか知らないという設定のもと、卒業してからの4人の人生を伏線として、捜査一課の刑事になっている<飛奈>は、仲間を信頼しながらも捜査を進めていかなければなりません。
かなり凝った構成で、随所にミステリーお決まりの伏線が引かれていますが、銀行強盗事件で流れ弾に当たって亡くなった女性の名前が頻繁に出てくるなど、ミステリーファンとしては過剰な伏線だと見抜いてしまえる個所もありますが、<飛奈>と組む本庁の刑事<南良>の冷静な分析が楽しめ、乱歩賞受賞の作品として楽しめました。
長浦市の大学4年生の<日向毅郎>は、振り込め詐欺グループのリーダーとして、次なる事業の展開を図るべく動いていましたが、銀行のATMから金を引き出す役の<氏原>は警察に目を付けられたことにより殺害してしまいます。
逃走資金として、振り込め詐欺で儲けた現金を、東北の雪深い実家に隠していたのを取りに戻った時に、偶然高校の同級生<井沢真菜>と駅で出会い、<真菜>も長浦市に住んでいるとのことで、同乗して帰ることになりまが、<真菜>も2歳の娘を凍死させ交際中の男を刺殺していました。
無関係に思われた殺人事件ですが、県警捜査一課の<澤村>は、刑事の感で二人の実家のある東北へと足を向けていきます。
前作 『逸脱』 から引き続いて登場する上司の<谷口>一課長、情報統計官<橋詰真之>、初々しい女性刑事<永沢初美>等の脇役がいい存在感でもって描かれています。
虚無的な殺人者の性格と、それを追う刑事たちの推理が交差しながら物語は展開、残りのページが少なくなるにつれてどのような結末で終わるのかと、楽しめた一冊でした。
女子高の2年生に転校してきた<紫織>から、親友の自殺を目撃をしたことがあるという告白を聞いた<由紀>は、死体ではなく人が死ぬ瞬間を見てみたい考え始めます。
<由紀>の親友<敦子>は、中学生の時に剣道の全国大会で優勝するほどの実力者でしたが、足のけががもとで推薦入学であこがれていた高校を諦めて<由紀>と同じ女子高に入学していますが、死体を見ればもう一度強い自分になれるのではないかと考えます。
夏休みを利用して、<敦子>は老人施設のボランティア、<由紀>は小児病棟の慰問ボランティアと、それぞれ死の瞬間に立ち会いたいという願望を隠して出かけていくのですが・・・。
何気ない登場人物たちが、思わぬところでつながってゆく構成は見事としか言いようがなく、まさに<湊かなえワールド>が楽しめ、現代女子高生の<怖さ>を感じさせる生態を描き切っています。
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