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主人公の<船山のぞみ>は、32歳の派遣従業員で、人とかかわるのが怖いという性格で、職場と家との往復を繰り返す毎日を送っています。
ある日祖母が入院することになり部屋を片付けていますと、一つだけ御朱印が足りない祖父の色紙を見つけた<のぞみ>は、祖母の病気回復を願って「七福神」巡りを始めます。
大学生時代に付き合っていた<大地>が、インドの国にて行方不明になっていることを知った<のぞみ>は、「七福神>めぐりを通して若かりし頃の自分を見つめ直していきます。
本編は東京の「七福神」巡りの場所が7編納められており、居ながらにして「七福神」のガイドブック的な要素もあり、青春物語としても気楽に読めました。
好きな作家の作品を読み「面白かった」というの当たり前のことですが、初めての作品を読み、いたく感動しますとほめ言葉もみつかりません。
この『最近、空をみあげていない』も、なにげなく手にした一冊でしたが、心温まる短篇が4編おさめられています。
小さな出版社に勤める営業マン<作本>と、大手書店の副店長である<野際>を中心に据え、出版業界と書店業界を舞台に物語は連作で語られていきます。
さりげない市井の男と女の巡り合わせも根底に潜ませながら、力いっぱい前向きに向かって生きていく登場人物たちの姿が美しく、感動してしまいました。
特に『美しい丘』に登場するストリッパー<立花雪華>の「どなたか、ツーショットお願いします!」の台詞には、ルルと涙してしまい、最後の一行となる彼女のプロフイール「将来の夢・・・本屋さん」という終わり方には、これまたルルと涙してしまいました。
詳しくは書きませんが、本好きの方にはぜひ読んでいただきたい一冊です。
<日本ソムリエ協会>発行の書籍で、執筆者は同協会のワインエキスパート・シニアワインエキスパートの資格を持つ男性100人で、101人目は<田崎真也>が解説を書いています。
見開き2ページを使い、右側には各自が選んだ(1000円台)のワインを1本と10分以内に作れる簡単つまみのレシピが掲載され、左側には(3000~6000円)の”もてなし”におすすめのワインが2本紹介されています。
ワインの種類も<赤・白・ロゼ・スパークリング・その他>と多彩で、それぞれの特徴がわかりやすく解説されていますので、どのページから読んでも、それなりにワインの世界が楽しめる構成です。
とても300本の銘柄を呑みつくすことはできそうにありませんが、(1000円台)のワインは、今後の参考になりそうです。
第一作目の 『アウトバーン』 で華々しくデビューした、警視庁上野署組織犯罪対策課の女性刑事<八神瑛子>シリーズの第2作目です。
容姿端麗ながら、捜査において暴力もいとわずヤクザ組織との情報交換も平然とし、警察署員には裏で金を貸し付け、これまた自分への見返りを求めながら犯人逮捕に執念を燃やします。
今回も、メキシコから密輸されてくる麻薬事件の捜査を中心として、署長<富永>が<八神>を辞めさせるべく策を練るのですが、成功するには至りません。
大物ヤクザの取材中に、週刊記者である夫が<自殺>で片づけられた事件の真相を探るべく、今回もかなり派手な立ち回りが展開しますが、香港の狡猾な女性のドンや元女性プロレスラー<里美>などの脇役も健在で、面白く楽しめました。
神奈川県警機動捜査隊に所属する女性刑事<クロハ>を主人公として、日本ミステリー文学大賞新人賞を 『プラ・バロック』 で受賞、その続編の 『エコイック・メモリ』 も衝撃的な内容で最後まで一気に読ませる内容でした。
本書は現在の機動捜査隊に所属する以前の<クロハ>を描いた短篇集で、<クロハ>の日常と事件ををリンクさせながら、6話が納められています。
本書のタイトルは短篇のひとつで、ミステリーなので説明できませんが「なるほど」という内容で、最終の短篇に書かれた最後の一行は、<クロハ>の性格をよく表しており、見事です。
所轄の地域課から自動車警邏隊に配属された<クロハ>ですが、殉職した警察官の父親との家庭問題を含め、現在に至る<クロハ>の背景が垣間見れる内容で、また冷静沈着な捜査がにじみ出ている構成で面白く楽しめました。
塩力商店街を舞台として、中学生の<茶子>と4人の男の子たちとの活躍を描いた<S力(エスりき)人情商店街>シリーズも、この第4巻で最終回です。
商店街には代々「おリキ様」と呼ばれる女の子が指名され、それをとりまく4人の男のたちが選ばれますが、7代目としての最初の仕事は、4人の男の子たちの中から、自分の夫を選ぶとともに、残り3人の男の子たちにも役目を振り分けなければなりません。
商店街の会長となるべき者、商店街の歴史を守る本屋さん、日本に貢献する企業を興しますが塩力出身ということを隠し通さなければいけない社長になるべき者等、振り分けに<茶子>は悩みますが、自然とそれぞれの役目が見えてきます。
スーパーマーケット中心の社会構造になってしまいましたが、歴史ある商店街を舞台とした青春物語として、楽しめた4巻です。
この<S力(エスりき)人情商店街>シリーズは全4巻あり、それぞれにお独立した内容かなと考えていたのですが、2巻目の 『緊急招集、若だんなの会』 を読み、これは全巻を読んでの完結編だとわかりました。
どの巻も200ページばかりの薄い文庫本ですので、気軽に読めるのがありがたいです。
2巻目では塩力商店街のスーパーの進出に対処するために<茶子>たち「若だんなの会」が奮闘するところで終わりましたが、今回はこの物語の核心である「おリキ様」の全容が提示され、<茶子>を取り巻く4人の男の子たちとの運命と舞台となっている塩力商店街の核心にも触れられています。
7代目の「おリキ様」として、男の子たちの運命を左右する<茶子>はどのような決断を強いられるのかは、第4巻目に引き継がれて完結となるようです。
妻が亡くなり小学3年生の息子を持つ<大友鉄>は、捜査一課から勤務時間が安定している刑事総務課に転属しています。
10年前の大学生時代に所属していた劇団「夢厳社」の創立20周年記念公演を観劇していた<大友>は、劇団の主宰者<笹倉>が舞台上で刺殺される殺人事件に遭遇してしまいます。
かっての劇団仲間が多く残る中、<大友>は総務課を離れ殺人事件の捜査を同僚<紫>と進めていきますが、第二の殺人未遂事件が発生、舞台で上演された『アノニマス』の台本通りの筋書きで事件が起こるなか、台本にはない第三の事件が起こってしまいます。
映画スターとして成功している<長浜>、女優として人気のある<早紀>、小道具係の<古橋>など、いまだ劇団俳優としての夢を追い求める姿と、劇団から離れ刑事という職業を選んだ自分との人生を対比させながら、<大友>は事件の解決に突き進んでいきます。
ワシントンDCに住む<ケイト>は、夫<デクスター>がプログラマーとして金融関係の大きな仕事を請け負い、ルクセンブルグに息子たちと移住してきます。
<ケイト>は大学を卒業して10年ばかり、夫に経歴を隠したままCIAに勤め、殺人を含めて諜報活動をしてきた過去を持ち、移住に際して退職してしまいます。
移住してしばらく経った頃、<マクレーン>夫妻と知り合うのですが、自分の経歴と関係があるような気がして、独自の調査を進めて二人がFBIの捜査員だということを突き止めます。
自分自身に対しての素行調査なのか、夫の仕事に関係しているのか、時系列を前後させながら手に汗握る疑惑の展開が繰り広げられ、最後まで一気に読み進めさせる構成でした。
物語は、7年前に世間を揺るがした6000億円の「明和銀行」の不正融資に絡み、旧大蔵省の官僚が二人殺されるところから始まります。
フィクションでありながら、1997(平成9)年に発覚した「第一勧業銀行(現みずほ銀行)」の460億円に上る不正融資事件と、大蔵省接待汚職事件を思いうかべてしまいました。
不正融資を捜査していた<松浦>刑事は捜査中に殉職してしまいますが、一人残された息子<亮右>は家に閉じこもるようになります。<松浦>の同僚<赤松>刑事の指導もあり、社会復帰を目指しているなかに事件は起こります。
公安部は、殺人事件の犯人として<亮右>を身柄を拘束しようとしますが、<赤松>は事前の情報から<亮右>を緊急避難させます。
銀行の不正問題に絡み、人生の方向を狂わされた周囲の人物たちと、公安部と刑事部の権力と陰謀の対立の中、手に汗握る展開が広がります。
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