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<宮部みゆき>の作家生活30周年記念作品 『この世の春(上)』 ・ 『この世の春(中)』 に続く、いよいよ最終巻の『この世の春(下)』です。
元藩主「重興」の病状が、幼少のころの父とそのそばめの女と関係があると考えた藩医「白田」たちはその時代を知る江戸下屋敷の責任者であった「岩井一之助」と「重興」の母「美福院」の話を聞きに江戸へと出向き、また「多紀」は、「重興」がいまだ思い続けている離縁した妻「由衣」を訪ねます。
「岩井」から「明野領」にまつわる覚書書である〈蔓署〉にまつわる話を聞き出し、女狭間「桐葉」とその父「九蛇=五郎助」の関係が判明、行方不明の男の子たちの意味合いも解き明かされ、「重興」の心の呪縛も解け、「重興」と「多紀」は夫婦になり物語は終わります。
読み手側としては、終盤に近づきほぼ結末が読める展開が進むなか、なぜか、「重興」と「多紀」の関係が唐突感があり、なじめませんでした。流れ的に「多紀」は熱血漢溢れる従兄の「田島十郎」と縁づくものと推測していたのは私だけでしょうか。
<宮部みゆき>の作家生活30周年記念作品 『この世の春(上)』 に続く『この世の春(中)』です。
奇異な精神状態で下野二万石の六代目藩主「北見重興」は、押込(強制隠居)させられ、別荘地である「五香苑」の座敷牢に蟄居させられ、藩医「白田登」や「各務多紀」たちの看病が始まります。
「重興」の病状が出出した16年前に心に何か大きな要因があるように見立てた「白田」は、「田島半十郎」に逃げ出した「伊藤成孝」の探索を兼ねて城下に向かわせますが、「半十郎」はその頃に4人の男の子が行方不明になっている事件が未解決のままであることを調べ出します。
そのころ、馬好きの「重興」の気分転換のために愛馬「飛足」が女馬喰の「しげ」と共に、「五香苑」に届けられ、久しぶりに「飛足」との乗馬の帰り道、「重興」に〈あの女〉があらわれ、池で発見された子どもの頭蓋骨のことを喋り、行方不明事件とのかかわりを読者に匂わせます。
また、「重興」は下男の「五郎助」が女中の「お鈴」を人質に座敷牢の「重興」の部屋に現れるのですが、「重興」の手により、殺害されます。刺客として「五香苑」に潜り込み「伊藤成孝」を殺害していた「五郎助」は北見藩内の陰廻か、飛び地明野藩の狭間なのか不明のまま、下巻へとつながります。
本書『この世の春』は、著者<宮部みゆき>の作家生活30周年を記念した作品で、江戸時代を舞台とした時代小説として、2017年(平成29年)8月に(上・下)2巻として刊行され、2019年(令和元年)12月1日に(上・中・下)の3分冊として文庫本化されています。
宝永7年の5月、長尾村の元下野北見藩・作事方「各務数右衛門」の隠居所に、「伊藤十郎兵衛成孝の乳母と嫡男「一之助」が逃げ込んでくるところから物語は始まります。応対した長女の「多紀」は、一度嫁いだことのある22歳ですが、六代目藩主「重興」の御用人の「伊藤成孝」が父「各務数右衛門」を、なぜ頼ってきたのか分からないまま、二人を筆頭家老「脇坂勝隆」の遠縁にあたる住職がいる円光寺へと連れて行きます。
北見藩内では、6代目藩主「重興」が心の病で「押込」(強制的な隠居)扱いになり、「伊藤成孝」は切腹させられたとの噂が流れる中、「多紀」の父「数右衛門」が、53歳で亡くなり、従兄の19歳の「田島半十郎」が「多紀」を、かって「重興」の別邸であった「五香苑」へと連れて行きます。
「五香苑」では、「重興」の座敷牢が作事されており、「多紀」は切腹したと噂のあった「伊藤成孝」が岩牢に綴じ込まれていきているのを知り、やがて彼の口から自分の出生の背景を知ることになります。なぜ「成孝」が藩主「重興」に近づいたのか、「亡くなった人の霊魂を呼び寄せる<みたまくり「御霊繰」>であった「多紀」の母との関わりもあり、理由も知らされます。
「重興」は、<みたまくり>たちが住む出土村を焼き払ったために3人の亡霊が乗り移っているとされ、「五香苑」において、かって江戸家老であった「石野織部」を館主として、「多紀」たちの「重興」の看護が始まるのでした。
<堂場瞬一>による本書)『ランニング・ワイルド』は、2017年8月、文藝春秋社から単行本が刊行され、2020年7月10日に文庫本で発行されています。数ある著者の得意分野であるスポーツ分野を扱った作品です。
瀬戸内とびしま海道での「アドベンチャーレース」に一組4名のチームとして参加した警視庁機動隊勤務の「和倉賢治」は、スタート直前に、携帯電話に「妻と娘を拉致した」との連絡があり、レース中にある物の回収を指示されます。レースを棄権することも考えましたが、チーム仲間の先輩「重盛康太」の引退記念レースということもあり、無事に回収、犯人に手渡せば、家族は開放されるということで、24時間のレースに参加します。
いつもなら冷静なコース取りの判断をする「わくら」ですが、回収場所に早く着きたいという焦る気持ちがコース選択を誤ることが随所にあらわれ、チーム仲間の不協和音が流れ始めます。
オリエンテーリングとトライアスロンをい組み合わせた24時間の「アドヴェンチャーレース」ということで、冗長とも思える観光案内的なコース説明が続きますが、これも初出が月刊誌『オール讀物』の連載作品ですので、さもありなんという気分で読み進めました。
文庫本の残りページ数が少なくなるのに合わせ、結末が気になる構成でしたが、何事もなく事件が解決するのには、『バビロンの秘文字(上・下)』にも感じた結末として、肩透かしをされた感が残る一冊でした。
やはり<堂場瞬一>は、『刑事 鳴沢了』シリーズ、『警視庁失踪課 高城賢吾』シリーズ、 『警視庁追跡捜査課』シリーズ、 『捜査一課 澤村慶司』シリーズなどといった刑事シリーズが、はずれがないようです。
現在、全国の映画館で遺作となりました 『海辺の映画館ーキネマの玉手箱』 が公開中ですが、<大林宣彦>監督を特集する『ユリイカ2020年9月臨時増刊号 総特集 大林宣彦』(1980円)が、(青土社)より発売されています。
本書では、 4月10日に死去した<大林宣彦> を追悼してその軌跡をたどる特集を展開。個人映画の先駆者、CMディレクター、アイドル映画の名手、反戦平和を願い続けた尾道出身の映画作家として<大林宣彦>が日本の映像史にもたらした足跡が紹介されています。
誌面には、監督作品のプロデューサーを務めてきた妻<大林恭子>(81)と長女<大林千茱萸>(56)の対談や、商業映画デビュー作『HOUSE ハウス』(1977年・原作者: 大林 千茱萸)公開直後の<大林宣彦>のインタビュー、<大林宣彦>から薫陶を受けた<塚本晋也>と<犬童一心>の対談や、<手塚眞>、<小中和哉>、<岩井俊二>、<行定勲>らの寄稿などが掲載されています。
また<大林宣彦>の作品に出演した<入江若葉>、<岸部一徳>、<根岸季衣>、<常盤貴子>、<石田ひかり>らが追悼文を寄せています。
本書『骨を弔う』は、2018年6月に単行本として刊行され、2020年6月10日に文庫本が発行されています。
著者<宇佐美まこと>の作品として初めて手にしましたが、ち密な物語の構成と作品中にたびたび登場する著者名<宇佐美まこと>が物語の伏線に使われているというサービス精神に圧倒されました。
物語は、四国で家具職人を営む「本多豊」を主人公に据え、近くの川べりで謎の骨格標本が発掘された新聞記事を読み、30年前の小学生時代に5人の仲間で山中に骨格標本を埋めたことを思い出し、あれは本当に骨格標本だったのかの疑問を抱いた「豊」は、東京で広告代理店に勤める「大澤哲平」に会いに出向きます。
当時小学生時代を過ごした村での記憶を頼りに、県会議員の妻になっている「水野京香」、東日本大震災で家族を亡くした「田口正一」へと真相を求めて会いに出向くのですが、首謀者だった「佐藤真美子」が亡くなっているのでは真相がつかめない中、4人は昔、骨格標本を埋めたと思われる埋めた場所へと出向きます。
辺鄙な村での複雑な人間関係を底辺として、30年ぶりに真実が明かされ、登場人物たちが織りなす思わぬ場面展開で、なるほどとうならせてくれる一冊でした。私にとっては、今年の読書〈ベスト3〉の力作です。
本書『悪寒』は、2017年7月集英社より単行本として刊行され、2019年8月に文庫化されています。
東京本社の大手製薬会社に勤めていた「藤井賢一」は、上司が起こした政治家へのリベート問題で責任を取らされる形で、系列の山形県酒田市にある置き薬販売店の支店に飛ばされてしまいます。
いずれ上司の言葉通り本社に戻れることを夢見て、置き薬の販売に励んでいますが、成績はあがらず、支店長に叱責される日々が続いていました。
そんなおり、東京で娘「香純」と暮らす妻の「倫子」から、不可解なメールが届き、その後、「倫子」が本社の常務を「藤井」の自宅マンションで殺害したという警察からの連絡を受けます。
自分が単身赴任中に、妻がどうして本社の常務とかかわったのかわからないまま、認知症の母「智代」や不登校の娘「香純」の心配も重なり、「賢一」の苦悩は高まるばかりでした。
二転三転する殺人事件の真相究明に、読者をサラリーマンとしての男の弱さを感じさせる主人公「賢一」の心情に沿わせながら、著者の世界に引きずり込まれた疲労感と共に、安堵感の広がる結末にミステリーの醍醐味の余韻に浸れる一冊でした。
本書)『捌き屋 行って来い』は 『捌き屋』 に始まるシリーズとして、9作目になるようですが、久しぶりに手にしました。
「捌き屋」とは、後ろ盾もなく組織にも属さず、一匹狼の裏稼業で、ゼネコンの建設工事の受注を巡る企業交渉人を指しています。
大きな仕事で一段落している捌き屋「鶴谷康」に盟友 花房組の「白岩」 から大坂万博工事に絡む新たな案件が依頼されます。依頼人は「鶴谷」が駆け出しの頃世話になった南港建設の「茶野」で、大和建工の一方的な契約解除を改めさせてほしいというものでした。
その原因は「鶴谷」が先の案件で捌いた恨みが絡んでいるようで、「鶴谷」は、元公安部の刑事「木村」の信用調査事務所の馴染みの面々と裏事情の情報調査乗り出します。
いつもながらの大阪弁の歯切れの良さと建設業界の裏事情が絡み合い、楽しめた一冊でした。
本書『十三階の神(メシア)』は、すでに2018年7月に単行本として刊行されていますが、警視庁公安部特別諜報員「黒江律子」を主人公とする 「十三階の女』 の続編になります。
国家を守るためには、非合法な操作も体を提供することも厭わない女捜査員「黒江律子」の所属する公安部5人の秘密組織は警視庁の13階にあることにより「十三階の女」と呼ばれています。
今回の新たな任務は、「オウム真理教」を彷彿させるかって地下鉄テロを起こした「カイラス蓮昇会」の教祖の死刑執行が迫る中、分派した「輪芽」教団に教祖の子供と名乗る「九真飛翔」が君臨し、テロ活動を起こすのではないかという危惧から、上司の「黒江」が不在の中、「律子」が動き出します。
すでに「律子」の母が「輪芽」教団に入信しており、「律子」は妹を潜入捜査させる決心をします。
公安部内の裏切りと仕組まれた教団との絡み、後半は読者を二転三転させる展開が待ち受けています。
シリーズ3作目として『十三階の血』が、すで2019年11月に刊行されていますが、これまた文庫化を待ちたいと思います。
本書は『隠蔽捜査』シリーズとして、8作目になる『去就』(隠蔽捜査6)に続く9作目『棲月(せいげつ)』(隠蔽捜査7)になりますが、警察庁のキャリアでありながら息子<邦彦>の不祥事で降格、大森署の署長として左遷された主人公<竜崎信也>も、本作でいよいよ大森署を去ることになります。
大森署管内を通る私鉄のシステムと都市銀行のシステムが次々にダウン。社会インフラを揺るがす事態を不審に思った大森署署長<竜崎>は、いち早く原因を究明すべく署員を現場に向かわせますが、管轄外の行動で、すぐに中止するように警視庁の生安部長から横槍が入ります。
さらに、管内で非行少年「玉井」のリンチ殺人事件が発生。二件の大きな事件の指揮を執る中、同期の「伊丹」本部長から「異動の噂が出ている」と告げられた<竜崎>は、公務員として移動・転勤は当たり前という考えでしたが、これまでになく動揺する自分に戸惑っていました。
リンチ殺人事件の被害者「玉井」の捜査を進めていく中で、「玉井」の非行グループのメンバーが何かにおびえていることを不審に感じた「竜崎」たちは、以前に「玉井」たちににいじめられ引きこもりになっている高校1年生の「芦田雅人」に目を付けます。
コンピューターに頼り切っている現代社会を背景に復讐を果たす伝説のハッカー「芦田」と「竜崎」の駆け引きが圧巻だっただけに、今回で大森署の個性ある刑事「戸高」や「根岸」たちともお別れだということが薄れてしまいました。
次作から<竜崎信也>は栄転となり、神奈川県警刑事部長として登場するようですが、すでに第10作目として単行本『清明』(隠蔽捜査8)が2020年1月20日に刊行されていますが、文庫化されるのを我慢して楽しみに待ちたいと思います。
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