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本書は<東野圭吾>の累計400万部を突破した<マスカレード>シリーズとして 『マスカレードホテル』 ・ 『マスカレード・イブ』 ・ 『マスカレード・ナイト』の第三作目になります。単行本としては、2017年9月に刊行され、文庫本としては、2020年9月25日に発行されています。
一流ホテルである「ホテル・コルテシア東京」を舞台として、捜査一課の若手刑事「新田浩介」と女性フロントクラーク「山岸尚美」の活躍を描いたシリーズとして、2011年に刊行された『マスカレード・ホテル』から3年後が描かれています。
都内のマンションで、ペットトリマーの28歳の「和泉春奈」の部屋を調べろと密告の通報があり、死体として発見されます。その後、密告者から「ホテル・コルテシア東京」の大晦日に行われるカウントダウンパーティー「マスカレード・ナイト」に犯人が参加するという情報があり、「新田」ら捜査一課のメンバーはクリスマス前からホテルに潜入捜査体制として従業員になりすまし警戒態勢を敷きます。
3年前の『マスカレードホテル』と同様に、「新田」はフロント業務につきますが、堅物なフロントマン「氏原」に閉口しながらも、コンシェルジェに格上げされている「山岸」と共に大晦日を迎えるのでした。
文中の主人公たちのセリフを読んでいますと、映画 『マスカレードホテル』 での「新田浩介」役の<木村拓哉>や「山岸尚美」役の<長澤まさみ>のイメージが同調してしまいました。
ホテル利用者たちの側面を伏線に使いながらの構成でしたが、最後の段にて突然少年「曽根英太」の名前と事件背後の供述が始まるのには驚きました。推理小説(ミステリー)の鍵はどんな形であれ、読者にすべて提出しておかなければならないという大基本形から逸脱した流れで、これはどうかなぁと感心しませんが、<東野>ファンの方には全体的に見て楽しめる一冊で、これまた映画化が期待できそうな内容でした。
コンシェルジェの「山岸尚美」も事件解決後、「ホテル・コルテシアロサンジェルス」へ栄転するようで、シリーズ第4作目は日本に戻ってきての、また数年後の事件となりそうです。
<陳浩基>の 『13・67(上)』 に続く『13・67(下)』です。
(下巻)には、4.泰美斯的天秤 The Balance of Themis (テミスの天秤 5.Borrowed Place (借りた場所に) 6.Borrowed Time (借りた時間に) の3篇が納められています。
それぞれの物語は、香港返還前後の社会状況を背景としていますので、香港を数回訪れた経験上、九龍や香港島の通り名や地名を懐かしく思い出しながら、読み進められますので、行間からの意味合い以上に一層の現実感をもって各事件が楽しめました。
特に最終章となる、6.Borrowed Time (借りた時間に)は、主人公「クワン」の警官としての原点ともいうべき物語で、信念ともなる「警察の真の任務は市民を守ること」という使命感が強く心に印象付けられる一遍でした。
単行本(2035円・税込)、文庫本(各870円・税抜)の2冊ですが、香港に興味ある推理小説ファンには、ぜひ読んでいただきたいおすすめの一冊です。
文庫本の帯に大きく第1位>の文字が入り、週刊文春「ミステリーベスト10」など各種ランキングで絶賛されています台湾の推理作家<陳浩基>の『13・67』は、文藝春秋社から2017年9月に単行本が刊行されていますが、ようやく2020年9月10日に文庫本(上・下)に分冊されて発行されています。
タイトルの『13・67』は、現在(2013年)から1967年へ、1人の名刑事の警察人生を遡りながら、香港社会の変化(アイデンティティ、生活・風景、警察=権力)を、時系列ではなく反対に過去に辿る逆年代記(リバース・クロノロジー)形式の本格ミステリーとなっています。どの作品も結末に意外性があり、犯人との論戦やアクションもスピーディで迫力満点でした。
上巻には、1.黑與白之間的真實 (黒と白のあいだの真実 2.囚徒道義 (任侠のジレンマ) 3.最長的一日 The Longest Day (クワンのいちばん長い日)の中編が3篇収録されていますが、第1篇で、主人公の「クワン警視」が肝臓がんのために寝たきりの描写で始まり、おもわぬ筋書きで息を引き取ることになりますので、この先の展開があやぶまれたのですが、それさえも全体構成の伏線となっているのに読み終わってから驚愕しました。
本格ミステリーとしても傑作ですが、雨傘革命(2014年)を経た現在の香港、1967年の左派勢力(中国側)による反英暴動から中国返還など、香港社会の節目ごとに物語を配する構成により、市民と権力のあいだで揺れ動く香港警察のアイデンティティを問う社会派ミステリーとしても読み応え十分でした。
2015年の台北国際ブックフェア大賞など複数の文学賞を受賞。世界12カ国から翻訳オファーを受け、各国で刊行中。映画化権は、<ウォン・カーウァイ>が取得しています。著者<陳浩基>は第2回島田荘司推理小説賞を受賞。本書は島田荘司賞受賞第1作です。
「クワン」の香港警察の「名探偵」と呼ばれた伝説の刑事の情報分析力と捜査手腕に感動する(上巻)でした。
女優<秋吉久美子>の女優人生に迫る書籍『秋吉久美子 調書』です。本の帯には、「これは『調書』だからセンチメンタルではいけない。読み物だからつまらなくてはいけない。45年余の女優人生。私は見た。私は挑んだ。そして私は語った。ウソはない。調書だから」と、秋吉自身のコメントが語られています
映画斜陽の時代といわれた1970年代、松竹映画『旅の重さ』の主役オーディションで、<高橋洋子>についで次点となり、自殺する文学少女に扮して本名(小野寺 久美子)で映画初出以降、演圧倒的な魅力を放って銀幕に登場した<秋吉久美子>は、『赤ちょうちん』(1974年・監督: 藤田 敏八) ・ 『妹』(1974年・監督: 藤田 敏八) ・ 『さらば夏の光よ』(1976年・監督: 山根成之) ・ 『あにいもうと』「1976年・監督: 今井 正) ・ 『ひとひらの雪』(1985年・監督: 根岸 吉太郎) ・ 『異人たちとの夏』(1988年・監督:大林宣彦) ・ 『深い河』(1995年・監督: 熊井 啓)など、数多くの傑作に出演していますが、意外にもこれまで彼女が辿ってきた軌跡ともいうべき作品歴を、批評とデータまで完備して総覧できる資料はありませんでした。
本書は、<秋吉久美子>と映画評論家・映画監督の<樋口尚文>の共著となっています。<樋口尚文>の初監督作 『インターミッション』 (2013年)に<秋吉久美子>は主演しています。
日本映画史に造詣の深い<樋口尚文>ならではの切り口で分析する「秋吉久美子」論、女優としてのこれまで、そしてこれからを秋吉が語り尽くすロングインタビュー、映画だけでなくドラマ作品も網羅した全作品データベースがまとめられています。
本書『夕映え天使』は、2008年12月に新潮社より単行本が刊行され、2011年7月に文庫本が発売され、表題作『夕映え天使』を始めとする人生の喜怒哀楽が、心に沁みいる6編からなる短編小説集です。
東京の片隅で、中年店主が老いた父親を抱えながらほそぼそとやっている中華料理屋「昭和軒」。そこへ、住み込みで働きたいと、わけありげな女性「鈴木純子」が現れますが、半年ほどで突然姿を消してしまいます。そんなある日、長野県の軽井沢署から、身元不明の女性の遺体から、「昭和軒」のマッチ箱が発見され、連絡が入ります。なぜうらびれた中華料理店に住み込みで働かなければならなかったのかの『夕映え天使』。
親の離婚で祖父の家で暮らすことになった少年が幼くして「さよなら」ばかりの「わかれ」を経験する『切符』
昭和39年の高度成長期から37年を務めた会社を定年退職する日の「高橋部長」の会社での「特別な日」を描いた回想録かと読者に思わせながら、実に壮大なSF作品の導入部だった『特別な一日』
女房・子供に逃げられ、大きな手柄もなく定年前の休暇として東北地方へ一人旅に出た老警官「米田」は、ふと入った喫茶店で、妻を殺した時効1週間前の指名手配犯のマスターと遭遇、大手柄を夢見る『琥珀』
高台に建つ大豪邸の少女と、下町に住む男子高校生二人の人生の交錯を描いた『丘の上の白い家』
著者自らの自衛隊時代の富士山麓の樹海での演習を元に描いた『樹海の人』など、人生の不可解な出会い・すれ違いを切り取り、「もののあわれ・せつなさ」を味あわせてくれる短編集でした。
第一話・第二話が納められた(435ページ)の 『小暮写真館(上)』 に続き(551ページ)の『小暮写真館(下)』です。
(下巻)の第三話では、「英一」も高校2年生になります、
「英一」は、通学の途中で、ST不動産の事務員「垣本順子」が電車飛込みかと思わせる事故を電車の中から目撃してしまうのですが、読後これが大きな伏線を持つことになります。
心霊探偵「英一」の元へ今回は、フリースクールのメンバーを集めたお誕生日会の写真になぜか「黄色いカモメのぬいぐるみ」が移っている写真が持ち込まれます。
また、花菱家に強盗が侵入、「英一」が急いで帰宅すると強盗犯は老人の幽霊に取り押さえられたといいます。「英一」は幽霊の正体を小暮写眞館の経営者であった「小暮泰治郎」であると確信し弟「光」と共に、「泰治郎」の娘「石川信子」の家へと出向きます。「信子」から「泰治郎」の生い立ちや思い出話をきかされ、「小暮写真館」の歴史が読者にも知らされます。
「カモメ」の写真の意図も手間がかかりましたが、或る映画のオマージュとして作製されたものであることが判明、最後の第四話に続くのですが、読み手としては、キャッチコピーの「最高の恋愛小説」はどうなるのか心配なまま読み進めましたが、愛想のないST不動産の事務員「垣本順子」が突然重要な登場人物に変わります。
ことあるごとに不動産屋に出向き恋心を抱いている23歳の「垣本順子」に相談していた「英一」でしたが、「順子」の元に決別していた母親が現れたことにより、「順子」は薬の過剰摂取で意識不明の状態で「英一」に発見されるのでした。最終ページに向かって、「順子」の数々の伏線が浮かび上がり、「最高の恋愛小説」という意味が最後に来て理解でき、納得の読後感をあたえてくれました。文庫本の(上・下)の表紙も、読後として眺めますとは胸に迫るせつなさをもってじんわりと重い意味合いが響いてきます。
<宮部みゆき>の『小暮写真館』は、2010年に講談社が企画しました「創業100周年記念出版描き下ろし100冊」の中の一冊として同年5月15日に単行本(720ページ)で刊行され、2013年10月16日に文庫本(上・下)として発行されています。
(上巻)には、二話が納められており、第一話は、タイトルにもなっています「小暮写真館」のいわれを背景にミステリアスな話が進みます。
主人公の高校一年生で長男「英一」をはじめとする花菱一家は、父・秀夫の気まぐれでかつて「小暮写眞館」を営んでいた築30年の古屋に引っ越すことになります。しばらくして「英一」の元に女子高生からフリーマーケットで購入した中に一枚の心霊写真が入っていて、封筒にかかれていた「小暮写真館」の名前から店に持ち込まれます。それは、不自然な場所に女性の顔が映りこむ不可解な写真でした。「小暮写眞館」を斡旋したST不動産屋の愛想のない事務員「垣本順子」に見せたところ、その女性は泣いている様に見えるといいます。「英一」は写真の謎を解明するために調査を行い、女性の正体をつきとめていきます。
第二話は、第一話の話を聞きつけた女子バレー部の「田部」から、心霊写真探偵と呼ばれる「英一」に、写真の調査依頼がきます。バレー部の河合先輩一家の縁側で親子3人を娘・公恵の婚約者・足立文彦が撮影したものですが、なぜか泣いている3人の姿が二重で映っていました。「英一」は初詣で偶然出会った同級生の「コゲパン」こと「寺内千春」の協力を得て、元婚約者の「足立」を探し出し解決します。
文庫本の帯に「最高の青春小説」とありましたので、上巻さいごで、「コゲパン」との経緯がでてきますので、てっきりこの「寺内千春」との恋愛話と心霊写真のミステリー構成で進んでいくのかなと435ページの上巻を読み終えましたが、さすが<宮部みゆき>は、もっと壮大な結末を下巻に用意しており、大きな感動と共に唸らせてくれます。
<宮部みゆき>の作家生活30周年記念作品 『この世の春(上)』 ・ 『この世の春(中)』 に続く、いよいよ最終巻の『この世の春(下)』です。
元藩主「重興」の病状が、幼少のころの父とそのそばめの女と関係があると考えた藩医「白田」たちはその時代を知る江戸下屋敷の責任者であった「岩井一之助」と「重興」の母「美福院」の話を聞きに江戸へと出向き、また「多紀」は、「重興」がいまだ思い続けている離縁した妻「由衣」を訪ねます。
「岩井」から「明野領」にまつわる覚書書である〈蔓署〉にまつわる話を聞き出し、女狭間「桐葉」とその父「九蛇=五郎助」の関係が判明、行方不明の男の子たちの意味合いも解き明かされ、「重興」の心の呪縛も解け、「重興」と「多紀」は夫婦になり物語は終わります。
読み手側としては、終盤に近づきほぼ結末が読める展開が進むなか、なぜか、「重興」と「多紀」の関係が唐突感があり、なじめませんでした。流れ的に「多紀」は熱血漢溢れる従兄の「田島十郎」と縁づくものと推測していたのは私だけでしょうか。
<宮部みゆき>の作家生活30周年記念作品 『この世の春(上)』 に続く『この世の春(中)』です。
奇異な精神状態で下野二万石の六代目藩主「北見重興」は、押込(強制隠居)させられ、別荘地である「五香苑」の座敷牢に蟄居させられ、藩医「白田登」や「各務多紀」たちの看病が始まります。
「重興」の病状が出出した16年前に心に何か大きな要因があるように見立てた「白田」は、「田島半十郎」に逃げ出した「伊藤成孝」の探索を兼ねて城下に向かわせますが、「半十郎」はその頃に4人の男の子が行方不明になっている事件が未解決のままであることを調べ出します。
そのころ、馬好きの「重興」の気分転換のために愛馬「飛足」が女馬喰の「しげ」と共に、「五香苑」に届けられ、久しぶりに「飛足」との乗馬の帰り道、「重興」に〈あの女〉があらわれ、池で発見された子どもの頭蓋骨のことを喋り、行方不明事件とのかかわりを読者に匂わせます。
また、「重興」は下男の「五郎助」が女中の「お鈴」を人質に座敷牢の「重興」の部屋に現れるのですが、「重興」の手により、殺害されます。刺客として「五香苑」に潜り込み「伊藤成孝」を殺害していた「五郎助」は北見藩内の陰廻か、飛び地明野藩の狭間なのか不明のまま、下巻へとつながります。
本書『この世の春』は、著者<宮部みゆき>の作家生活30周年を記念した作品で、江戸時代を舞台とした時代小説として、2017年(平成29年)8月に(上・下)2巻として刊行され、2019年(令和元年)12月1日に(上・中・下)の3分冊として文庫本化されています。
宝永7年の5月、長尾村の元下野北見藩・作事方「各務数右衛門」の隠居所に、「伊藤十郎兵衛成孝の乳母と嫡男「一之助」が逃げ込んでくるところから物語は始まります。応対した長女の「多紀」は、一度嫁いだことのある22歳ですが、六代目藩主「重興」の御用人の「伊藤成孝」が父「各務数右衛門」を、なぜ頼ってきたのか分からないまま、二人を筆頭家老「脇坂勝隆」の遠縁にあたる住職がいる円光寺へと連れて行きます。
北見藩内では、6代目藩主「重興」が心の病で「押込」(強制的な隠居)扱いになり、「伊藤成孝」は切腹させられたとの噂が流れる中、「多紀」の父「数右衛門」が、53歳で亡くなり、従兄の19歳の「田島半十郎」が「多紀」を、かって「重興」の別邸であった「五香苑」へと連れて行きます。
「五香苑」では、「重興」の座敷牢が作事されており、「多紀」は切腹したと噂のあった「伊藤成孝」が岩牢に綴じ込まれていきているのを知り、やがて彼の口から自分の出生の背景を知ることになります。なぜ「成孝」が藩主「重興」に近づいたのか、「亡くなった人の霊魂を呼び寄せる<みたまくり「御霊繰」>であった「多紀」の母との関わりもあり、理由も知らされます。
「重興」は、<みたまくり>たちが住む出土村を焼き払ったために3人の亡霊が乗り移っているとされ、「五香苑」において、かって江戸家老であった「石野織部」を館主として、「多紀」たちの「重興」の看護が始まるのでした。
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