今年の読書(16)『火口のふたり』白石一文(河出文庫)
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東京の大学を出て銀行に勤め、取引先の社長の娘と結婚しましたが、クラブママとの浮気がばれ離婚、銀行も追い出されるように退社して会社を起こしますが、東北大震災で営業不振、倒産の危機を迎えている41歳です。
<直子>とは、彼女が上京していた時期に男女の関係になり、<賢治>が結婚するまで続いていましたが、彼の結婚を機に彼女は福岡に戻り15年が経過していました。
会社の営業不振で、気分転換のため半月程休業して福岡に戻った<賢治>は、挙式までの五日間、身体の相性が刻まれた過去の記憶のもと、狂おしいほどまでに<直子>とのセックスに溺れていきます。
刹那的な快楽を求める二人は、燃え盛る火口に飛び込むような危険な立場にいますが、二人の未来に一抹の光明を与えるとともに、「いかに生きるか」の主軸をぶれることなく描き切っています。